SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>15.富士通システムソリューションズ(上)

2006/09/11 20:37

週刊BCN 2006年09月11日vol.1153掲載

小規模案件の重点獲得で高利益を実現

経常利益率は一時9.1%にまで到達

 3期前の2004年3月期は、経常利益率9.1%。ここ6年間にわたり年商500億円以上をキープする富士通システムソリューションズ(Fsol、聖五社長)の経常利益率は3期前、10%目前にまで伸びた。

 その高い経常利益率を支える要因は、情報システム開発・案件を“売り切り”で終わらせないビジネスモデルにある。情報システムを開発し顧客企業で稼働させた後は、運用業務が発生する。その運用業務をFsolは徹底的に獲りにいく。ホスティングやハウジングサービス、保守サービスを必ずセットで提案。場合によっては、ASPサービスの提案も行う。安定的な収入が見込め利益率が高いストックビジネスに結びつける。現在の全顧客のうち「約30%は何らかのストックビジネス型サービスを利用してもらっている」(社長)状況で、ストックビジネスの利益率は、約20%と開発よりも高水準。全売上高のうち、約30%をストックビジネスが占める。これがFsolの高利益体質を支えている。

 提案手法も独特だ。顧客先に訪問する際、原則として営業担当者にSEを同行させる。具体的な提案をするためと、商談期間を短縮するためだ。SEにも営業実績のコミットメントレベルを設け、士気を高める。また、顧客のクレーム情報や要望をまとめたデータベースには、ストック型サービス提供の有無や、どんな情報システム環境にあるかという情報も格納。営業担当者とSEは、この情報をチェックしたうえで顧客先に出向く。データベースには1800社2万2000件の情報があって、毎月約2000件のペースでデータが積みあがっていく体制が整っている。

 ストックビジネスに結びつける営業手法とともに、Fsolの利益率を高めている要因がもうひとつある。それは攻めるターゲットが明確であること。中堅以下の一般企業を営業先として選定している。「開発案件プロジェクトの4分の1は500万円以下で、大規模な案件でも3-4億円」。

 「500万円前後のプロジェクトは、納入までのイメージをSEが描きやすく、不採算化を招かない。それだけでなく、得意の規模だけに原価率を大規模案件よりも抑えることが可能になる」のがその理由だ。営業担当者には、「小口ビジネスキャンペーン」と題し、500万円以下の案件を獲得し原価率を70%以下に抑えることができれば、成功報酬として売り上げの10%を還元する施策を実施するほど、小規模案件を獲得する営業を徹底させている。

 利益率の高い小規模案件を集中的に獲りにいき、ストックビジネス型サービスへつなげる。それがFsolの強さだ。

 しかし、05年3月期はつまずくことになる。経常利益率が0.7%まで落ち込んだのだ。要因は、それまで縁遠かった不採算案件の発生。どのSIerでも抱えている赤字案件が数件、同時期に発生したのだ。(つづく)(木村剛士●取材/文)

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