視点

POSデータが描き出すネット通販の実像

2006/08/07 16:41

週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載

 ネット通販といえば、低価格な商品が売れるチャネルというイメージだが、実態をみると意外に高付加価値型、つまり高額な商品が売れている。実際に販売された全商品の単価を比べると、店頭の1万600円に対して、ネットのほうが1万6300円と高い。POSデータの集計から、そうした結果が浮かび上がってきた。

 BCNランキングに、この7月からアマゾン ジャパン、サクセス、ストリーム、ムラウチドットコムなどのネット通販専門企業のデータが加わった。従来の店頭販売データと、ネット通販データを比較することで、これまで正確に把握できなかったネット通販の実像が明らかになってきた。

 IT、デジタル家電関連製品115品目のうち、70品目でネットのほうが購入単価が高いという一種の「逆転」現象が起きている。

 たとえばフラッシュメモリタイプの携帯オーディオでは、記憶容量1GB以上の販売比率が店頭の58.7%に対して、ネットは70.4%と大きく上回っている。こうした傾向は趣味性の強いパソコン関連商品に限らない。

 ITのネット通販といえば、個人を中心にしたビジネスと思いがちだが、実は企業ユーザー向けの業務用モデルが急速に売り上げを伸ばしている。

 ページプリンタの場合、全体の売り上げの約60%強が店頭で、残りの40%弱はネット通販で売れていることが分かった。しかも、企業で使われることの多いA3判の構成比は、店頭が21.7%であるのに対して、ネットでは32.5%に達している。平均価格が13万円台で企業需要が中心のプロジェクターにしても、全体の4分1はネットで売れている。高額な商品だから、あるいは業務用だからネットでは売れないという常識は覆りつつある。

 今回、デルが国内でカラーレーザープリンタのネット直販に踏み出したのも、こうしたネット市場の成熟を見極めてのことだろう。訪問販売に重点を置く国内メーカーは往々にして、ネットはまだまだ未成熟な市場と見がちだが、実際にはユーザーの意識のほうが先行している。現在のところネットの売り上げ規模は、金額ベースでみると店頭を含めた全体の7%だが、成長率は毎年20%を超えている。専門的なシステム構築を必要としない部門クラスのサーバーや、ネットワーク機器、プリンタなどの販売ルートとして、ネット通販が重要な地位を占める時期はそれほど遠いことではない。
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