システム開発の効率化最前線
<システム開発の効率化最前線>14.イリイ B2C企業向けの次期主力製品を開発
2006/08/07 20:37
週刊BCN 2006年08月07日vol.1149掲載
.NETフレームワークを初めて本格採用
■得意とする「通販関連システム」の開発技術を生かす
小売り企業にとって、インターネット通販は有力な販売チャネルのひとつであり、通販システムの構築に際して最新のIP-PBX(IP対応の構内電話交換装置)などを導入したコンタクトセンターの機能拡張も相次いでいる。インターネットと関連が深い業務システムでは、「ウェブ対応は欠かせない要素」(青沼克一・取締役マーケティングセンター長)であることから主力製品の刷新に乗り出した。

02年にはインターネット通販のウェブサイトと密接な連携が可能な“B2C型”企業向けの販売管理システム「BIG通販Pro」を製品化。得意のCTIシステムと連携させることでインターネット通販やコンタクトセンター業務への対応を加速。CTIシステムを納入した顧客企業を中心として、約200社にBIG通販Proを納入している。
売れ筋のインターネット通販用のウェブサイトを開発する事業者とのアライアンスも強化し、B2C型企業向けの基幹業務システムのビジネスを拡大させている。
■ビジュアルスタジオ」の全面採用に踏み切る
だが、B2Cを切り口とした基幹業務システム関連のビジネスが拡大する過程で重大な課題が浮上した。開発環境がビジネスの実態と合わなくなってきたのだ。
パソコン用OSの「MS-DOS」から「ウィンドウズ」へ自社の業務アプリケーションをつくり変える90年代前半、マイクロソフトの開発ツールは使わずに他のベンダーの開発ツールを採用した。ウィンドウズ対応の業務ソフトを開発するのに最適だと当時は考えられた。

これまでほとんど使ったことがないビジュアルスタジオで次期製品を開発するのは技術陣にとって高いハードルとなった。開発エンジニアの小松拓哉・開発グループスペシャリストは、「データベースへのアクセス方法など従来使っていた開発ツールとは大きく異なる部分がある」と、使い慣れたツールとの使い勝手の違いによる壁に突き当たった。
課題を克服するためにとった戦略は受託開発プロジェクトの“選択受注”だ。オリジナルのパッケージソフト開発をメインとしているイリイは、受託開発は原則として受注してこなかった。しかし.NETフレームワークをベースとした大規模な基幹業務システムであり、自社の技術陣にビジュアルスタジオを使った.NETフレームワーク対応のアプリケーションの開発ノウハウを速やかに習得させたいという狙いから受注に踏み切った。規模が大きく、開発には足かけ3年の時間を費やした。
■ビジネスの軸足をB2C型企業に移していく

今年度からは最新のビジュアルスタジオと.NETフレームワークをベースに、イリイの得意とする基幹業務システムとCTIシステムを融合させた“B2C型”企業向けの新製品の開発を本格化させた。今年度(07年3月期)末までには完成させる予定だ。ウェブに対応させるとともにXMLなどを使ったウェブサービスに対応しやすくなる。
たとえば、インターネット通販などを手がけるB2C型の企業では、コンタクトセンターを人件費の安い沖縄に設置して、倉庫は交通の便がよい東京の臨海地区に確保。物流や決済は運送会社や決済代行会社に委託するなど遠隔地や複数の企業と有機的なシステム連携を図ることで、業務を効率化させる動きが活発化している。
開発中の新システムでは、IP-PBXを採用したコンタクトセンターとの連携が容易になるだけでなく、委託先の事業者にはウェブ経由で自社のシステムを活用してもらうことも可能になる。インターネット通販に使うウェブサイトとの連携もスムースに行える。従来の.NETフレームワーク非対応のクライアント・サーバー方式では実現が難しかったものばかりだ。
インターネット通販などの拡大によりB2C型企業のIT投資は急速に増えている。イリイではB2C型企業の需要拡大が追い風となり、今年度は昨年度売上高約8億8000万円の13.6%増、10億円を見込む。来年度から本格投入する予定のB2C型企業向け新システムでは、発売後1年間で新規顧客を中心に100システムの販売を目指すなど需要拡大を背景とした強気の販売目標を掲げる。
今後は得意とするCITや販売管理システムを生かし、ビジネスの軸足をB2C型企業に移していくことで競合他社との差別化を推し進める中期計画を立てる。これにより2年後の08年度には、昨年度比で1.6倍に相当する14億円の売上高を目指す考えだ。
(取材協力:.NETビジネスフォーラム)
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