美しい自然の保護 再生に向けて

<美しい自然の保護 再生に向けて>1.日本の原風景を後世に

2006/07/10 16:04

週刊BCN 2006年07月10日vol.1145掲載

 一昨年3月に現役を引退してから2年数か月。私は今、美しい自然の保護と再生に向けて精力的に取り組んでいます。

 陶芸の里、栃木県益子町の窯元の家に生まれ、標高302メートルの高館山の見事な松山を眺めて育った私は、美しい里山の風景に強いあこがれと郷愁を抱き続けてきました。そして連日の業務の間に、寸暇を惜しんで全国各地の山紫水明を求めて旅することを楽しみにしてきました。素晴らしい景観に感動し、ビルマ戦線で生き残った1人として、生きていることの喜びを満喫し、感謝し続けてきました。その半面、高度成長を続ける中で、大気や河川、湖沼の汚染が進んでいることに心を痛めていました。大気の汚染や森林の喪失など、自然環境の破壊と地球温暖化の現象は、もはや待ったのなしの状況で、人類の生存を脅かす世界的な課題になっています。それに気付いて我が国はいち早く公害問題や省エネに取り組み、みるべき大きな成果をあげてきました。その上さらに景観法の制定を機に、国を挙げて自然環境の保護や再生に関心が高まり、大変喜ばしい機運になってきました。しかし、今までの汚染破壊が余りにも甚だしかったので、その再生には多額の費用がかかり、困難が予想されています。

 私は50年近いビジネスマン生活に終止符を打ち、第2の人生をスタートするに当たって、この難事業の解決に少しでも役立ちたいと思い、残りの人生をかけることにしました。千葉県鴨川市の美しい棚田の保全や、琵琶湖の水質浄化、日本橋川や神田川を中心とした美しい東京の水辺の再生など、やりたいことは山ほどあります。その1つ1つを確実に実行実現して、清潔で美しい景観を後世に残したいと考えています。(大塚商会名誉会長 大塚 実)

戦前の高館山
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