視点
「コンテンツ産業NHK」は不要なのか
2006/06/26 16:41
週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載
NHKの民営化も視野に入れ、検討するはずだった懇談会の結論は、受信料の値下げを前提とした支払い義務化、チャンネル数の削減、番組アーカイブのブロードバンドでの提供などが柱になっている。つまり、衛星放送を2チャンネル、FM放送を1チャンネル削減し、NHKは5チャンネルとする。相次ぐ不祥事で激減している受信料収入。今後も収入の回復が期待できないとなれば、支出を削減し、支払いを義務化するしかない。チャンネル削減は支出を抑えるもっとも手っ取り早い対症療法だ。コストが削減できるのだから、受信料も値下げせよという論理だ。
新聞でいえば、ページ数を減らして値下げせよ、ということである。値下げ幅には何も触れていない。視聴者のチャンネル選択権を狭めて、国民は納得するだろうか。予算審議は国会に握られたままで、自由で独立したメディアとしての姿は、今後のNHKには期待すべくもない。
NHKが民営化したら、困るのは広告収入を奪われる民放である。政府から独立した民間企業になって、困るのは、政治家であり、政府だ。民営化しても国民は何も困らない。逆に受信料負担がなくなるからありがたい。番組の質の低下を心配する向きもあるが、純粋に民間企業として経営を続けてきた新聞社はそれで紙面の質の低下をもたらしたか。けっしてそうはならない。
そもそも良質な番組を制作できる組織NHKをなぜ縮小、弱体化させるのだろうか。日本発の優良コンテンツはゲームとアニメしかないといわれ、コンテンツ産業振興が求められているのに、その最有力候補であるNHKを切り刻んで、弱体化させてどうするのだろうか。この報告の裏で喜んでいるのは、政治家、民放、NHK経営者、そしてハリウッドだけだろう。
いずれにせよ、あらゆる権力、勢力から独立したメディア企業として存続しない限り、NHKに未来はない。
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