未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業
<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>82.ワンビ
2006/06/26 20:43
週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載
リモートで機密情報を削除
ワンビ(加藤貴代表取締役社長)は、激戦区の情報漏えい対策ソフト市場に、ユニークな技術で乗り込んだソフト会社だ。市場調査と開発に1年以上を費やし、今年6月に事業を開始した。自社開発の「TRUST DELETE(トラスト デリート)」は、遠隔地からパソコンのデータを消去することができる。
機密情報や個人情報が入ったパソコンを盗難・紛失した場合、そのパソコンがインターネットにつながった瞬間に予め消去設定しておいたデータを消すことができる。第三者がインターネットにつながない場合でも、利用者が設定した時間を過ぎれば、データを消去する機能を持っており、この機能で情報の不正閲覧・不正利用を防ぐ。「遠隔地からネットを通じて消去するのは当社以外にない」としており、現在特許申請中だ。
また、データを消去した後は、データを完全に消去したことを証明するための「消去証明書」を発行する。これにより、情報漏えいが起きた場合に、「顧客や取引先にデータが漏れなかったことを証明できる。暗号化ソフトよりも信頼が高いはずだ」(加藤社長)とその優位性を強調する。
このほか、「TRUST DELETE」がアンインストールされるのを防止するために、「アプリケーションの削除」をパスワードで守る機能も搭載。保険会社と組み、TRUST DELETE利用企業は、「個人情報漏えい保険」に通常価格よりも安価に加入できる体制もつくる予定だ。
まずは一般消費者向けに、ソフト販売会社のトリスターを販売元として5800円で提供し、発売後1年間で5万本の販売を目指す。その後、各PCの設定変更を情報システム管理者が一元的に行える機能を付加した企業版を、中小企業に売り込む。個人向け市場にターゲットを置いたのは、「利用用途は主に法人と想定しているが、SOHOや中小企業は、家電量販店やパソコンショップの店頭でソフトをまとめ買いするケースが多いため」だという。また、「店頭にパッケージを並べることで、知名度を高めたい」という副次的効果も狙っている。
今年度(2007年3月期)の売上高目標は2億円。加藤社長は、トレンドマイクロやURLフィルタリングソフト開発・販売のネットスターに在籍した経験を持つ。また、ほかの役員もセキュリティソフト業界に長く在籍した人材を揃えている。
経験豊富な経営陣が、類がない特殊な技術をもって、どこまで競争激しい情報漏えい対策ソフト市場で存在感を示せるか。まずは店頭での結果が最初の試金石になる。(木村剛士)
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