IT Stock Frontline

回復なるか東京市場

2006/06/26 16:04

週刊BCN 2006年06月26日vol.1143掲載

企業収益の好調さが救い

 大きな亀裂が入った東京株式市場。今回の世界的株安は、インフレと景気鈍化という2つの難問に直面した米国経済の変調が引き金。既定路線だった米国の利上げ打ち止めが微妙になり、世界の新興国はじめ株式市場に向かっていた資金が米国に逆流し始めたことが混乱を招いた。海外投資家は利益の乗っている保有株の売却を進めており、昨年1年間で40%超も上昇した日本株はその対象となったようだ。

 となれば、世界的な株安傾向に歯止めがかからないことには東京市場の基調転換は期待薄ということになる。米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)が開かれる6月28、29日が大きなポイントとなりそうだ。

 東京市場のこれまでの株価上昇を支えてきたのは景気回復。その景気回復は株価上昇による資産効果もプラスになっていただけに、今回の株価急落が個人の消費意欲、企業の設備投資に与える影響には注意が必要だろう。

 ただ、企業収益は好調だ。大手調査機関の大和総研が発表した企業収益見通し(金融を除く全産業)によると、2007年3月期は売上高が5.5%、経常利益は6.1%の増加。原材料高、円高というマイナスを吸収して増益を維持。7月後半には企業の4-6月期決算が把握できるため、そこで好内容が確認できれば株価は回復色を強めそうだ。

 ところで株価全面安のなかで、短期資金は新規上場株に向かっている。6月8日に上場した金融情報配信のフィスコ(大証ヘラクレス)は公募価格13万円台に対して初値27万円台、その後40万円近くまで上昇する人気ぶり。ただ、6月6日に上場した飲食宅配のサイト運営の夢の街創造委員会(大証ヘラクレス)は公募価格45万円に対して130万円の高値を付けたが、その後60万円台まで急落するなど激しい値動き。新規上場株も選別の動きとともに、短期資金に翻弄されるケースが出ている。(有賀勝久)
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