未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>81.ウインモバイル

2006/06/19 16:18

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

モバイルアプリを中小企業に

 ウインモバイル(田中辰夫社長)は昨年12月に設立、携帯電話向けソフトウェア開発・販売およびASPサービスを提供する会社としてスタートした。

 セキュリティソフト大手のマカフィーで営業担当役員を務めていた田中社長が独立して創業した。情報セキュリティ事業に約10年携わってきたなかで、将来的にビジネスチャンスが多いと考えたのがモバイル向けソフト。つまり携帯電話上でも動くアプリケーションの提供だった。ターゲットは、大企業ではなくITにかけられる投資が少なく、情報システム戦略を立案する人材も乏しい中小企業に置いた。

 今年3月に製品の第一弾として販売を開始したのが営業支援(SFA)機能を提供するサービス。1人あたり月額3150円で、初期投資なしに利用できるASPサービスとしてリリースした。このサービスでは、PCと携帯電話で営業業務の進捗を入力・管理することで、営業活動の効率化や生産性向上に役立てる。ASPサービスとしたことで、初期投資負担を軽減するとともに、営業情報自体はウインモバイルが運営するASP専用サーバーに格納され携帯電話には何の情報も残らないため、セキュリティも確保できるという。一方で、中小企業向け製品の開発にあたり、もっとも気をつけたのは、「複雑化させないこと」(田中社長)だった。

 SFAは目新しい分野ではなく、ウインモバイルは後発組。ソフトブレーンなど有力ソフトメーカーも存在する。ただ、田中社長は「今あるSFAソフトはどれも高機能すぎて使いにくい」と感じ、基本的な機能だけに絞り込んだ。営業担当者の行動管理と案件の進捗管理、日報・週報の管理だけで、それ以外の機能は搭載していない。このコンセプトが奏功し、大規模なプロモーション活動なしに体験版のダウンロード数は約100件に到達。ダウンロードした企業の大半は、シンプルな操作方法が目当てだという。なかには、他社製SFAを使っていながら、「複雑な操作性に苦しみ、乗り換えを検討している企業も少なくない」とみる。

 まずは順調な滑り出しというが、今後は販路の拡大が重要になる。直販のみの現在の販売体制に加え、代理店を集め間接販売網を構築することが売り上げを伸ばすためには必須だ。ASPサービスは、ソフトウェアの販売事業よりも売り上げが小さく、代理店は担ぎたがらない。その点をどう解決するのか。顧客企業だけでなく、代理店となるITベンダーにも製品コンセプトが受け入れられるかが、飛躍のカギになるだろう。(木村剛士)
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