SI新次元 経常利益率10%への道

<SI新次元 経常利益率10%への道>4.インフォメーション・ディベロプメント(下)

2006/06/19 20:37

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

「縁の下の力持ち」に徹する

CSRを果たす数値目標

 創業者である尾﨑眞民氏(現会長)が、専務の舩越真樹氏に「次はキミだよ」と社長交代の意思を示したのは、今年の1月だった。舩越氏はかつての副社長時代、インターネット関連の新規事業で会社に大きな損失を与えた責任を取って、自ら専務に降格した。それから3年が経った。「新年の挨拶に訪問したら、いきなりでしたから、それは驚きました」と舩越氏は振り返る。

 同社は1969年10月、尾﨑眞民氏がデータ入力サービス会社として設立した。「仕事があるのか、採算に合うのかなど全く考えなかった。もう一度同じことをするか、と尋ねられたら、答えは間違いなく“ノー”ですね」と氏は苦笑する。ITベンチャーの第1期生でもある。

以後、システム運用・保守サービス、ソフトウェア開発・販売、コールセンター・サービスと事業を広げてきた。「どこといって目立つことのない、地味な会社」と尾﨑氏は謙遜するが、自負するのは「当社は下請けではない」ということだ。売上高の大半をユーザー企業との直接契約で占めるというのは、独立系ITサービス会社として自慢してよい。

 対して現社長の舩越氏は慶応大学を出て保険会社に入り、インフォメーション・ディベロプメントに移籍したのは30歳の半ばを過ぎた時だった。管理能力と人材活用の手腕、企画力が高く評価され、とんとん拍子で役員に昇格した。周囲の目は「次期社長候補」と見た。その重圧が新規事業に走らせ、撤退の決断を鈍らせた。

 「会長にはよく辛抱してもらったと思います。自らに降格処分を課してから3年間、ずっと考えたのは“仕事に誇りを持つ”とはどういうことか、でした」と述懐する。同社の主業務はデータ入力、運用・保守、オンサイト型ソフト開発など、どれをとっても地味な仕事。「だが、ユーザー企業にとって欠かせない。当社は縁の下の力持ちに徹すればいい」と考えるようになった。

 社長に就任するに当たって、舩越氏が全社に示したのは「3つの組織、4つのビジョン、5つのヒント」だった。3つの組織は、「前向きな姿勢を怠らない組織」「明日の組織づくりを怠らない組織」「人間力づくりを怠らない組織」、4つのビジョンは「チャレンジ」「ハイ・テクノロジー」「グローバル」「クリエイティブ」、5つのヒントは「身だしなみに気を配る」「悪い本当の事実を報告する」「勇気をもって意見を言う」「自分の仕事でないとは言わない」「命令に従い確実に実行する」。

 さらに「わくわくする未来に参加する情報サービス企業」という会社としてのミッション、「卓越した技術、高品質のサービス、未知への挑戦」という3つの命題(三命)を掲げた。「売上高を伸ばし、利益率を高める目的は何なのか、それを社員の1人ひとりが考えていく会社」「CSR(社会的責任)を果たせる会社」が舩越氏の願いでもある。経常利益率10%は、そのCSRを果たすための数値目標といってよい。(佃均(ジャーナリスト)●取材/文)
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