ユーザー事例 経営がITを変える
<ユーザー事例 経営がITを変える>10.日本製粉【上】
2006/06/12 20:29
週刊BCN 2006年06月12日vol.1141掲載
パレットの流失に歯止め
低コストで効率よく管理
日本製粉(堀川征孝社長)は、物流用のパレットを管理するシステムを日立系SIerのニッセイコムの協力を得て開発した。収入の源である商品を管理する販売管理システムなら1つの誤差も許されない厳密さが必須条件となるものの、パレットは「梱包資材」の部類に属するために管理の優先度は比較的低い。
梱包資材には商品管理ほどの厳密さは求められないにしても、いかに低コストで効率よく管理するかが最大の課題だった。
パレット管理の難しさは、貨物とともにパレットを受け取った側に、「送り手の資産であるパレットを預かったという意識が薄い」(日本製粉の簗島功・業務本部次長業務管理グループ)という点にある。
パレット管理に関する精度の高い情報をタイムリーに客先に伝達していくことで管理意識を高めてもらい、返却を促していく仕組みを採用した。
小麦粉などの商品を乗せたパレットは客先に運ばれ、客先で加工された商品を乗せて、さらにその次の客先へ運ばれるケースもある。
パレットには日本製粉のロゴが印字してあるため、最終的には戻されることになるものの、必ずしも最初に出荷した事業所に返却されるとは限らない。大阪の工場で出荷したパレットが東京の工場に戻ってきたり、貸し出した客先とは違ったところから返却されることもあって、流通を複雑化させている。
これまでは貸し出し数と返却数から残高数を把握する台帳方式で管理していたが、パレットの複雑な流通に対応できず、正確な把握が困難だった。数年前にプラスチック製のパレット(プラパレ)に変更するときに完全コンピュータ化を決めた。プラパレは木製に比べて丈夫で約2倍の寿命があるが、価格も2倍に跳ね上がる。単価が高いプラパレの流失率を減らさなければ、損失額が膨らむことが予想されたからだ。
プラパレ1枚の価格が7000円程度だとして、全社約10万枚の保有量のうち仮に1割が流失したとすれば、単純計算で7000万円の損失になる。プラパレは丈夫で使い勝手がいいためか、流失量が多いことが知られている。このためプラパレに移行する2003年のタイミングでコンピュータによる管理を本格的に始めた。
また、パレット管理用の業務パッケージソフトも見あたらなかった。そのため、システムはゼロから設計し、開発することにした。
複数のITベンダーに相談したが、従来の台帳方式による管理をそのまま電子化する案や、販売管理のように厳密に数を管理しようとする案、極端に価格が高いなどで折り合いがつかず、いいアイデアがなかなか見つからなかった。(つづく)(安藤章司●取材/文)
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