視点
技術者育成は教育現場への支援から
2006/05/29 16:41
週刊BCN 2006年05月29日vol.1139掲載
日本の学生は、米国どころかアジア諸国に比べても、突出した人材が少ない。そんな声が頻繁に聞かれる。身近なロボコンや学生のプログラムコンテストでも、アジア諸国から参加した学生が大差で日本チームを打ち負かす光景が珍しくない。関係者に話を聞くと、学力低下の問題は表面に現れる以上に根深いという。
教育制度や予算の問題、経済的なゆとりと向学心の低下。さらに、英語がネックになって、最新の研究成果や事例の収集能力が諸外国に比べて低いという指摘もある。いずれも、ひと筋縄で片付けられる問題ではなさそうだ。
人口減少に加えて学力までもが地盤沈下の傾向にあるとすれば、IT関連企業にとっても事は重大だ。ある教育関係者は、「学校に人材を求めるだけでなく、企業側もプログラミング実習などに専門家を派遣し積極的に教育に関与すべきだ」と指摘する。
技術革新が早い情報処理の世界では、最新の言語やプログラムの習得が欠かせない。ところが予算上の問題で、そうしたツールが学生に行き渡らない。自費で購入したとしても、習熟した教師が少ない。教える側にしても、最新のソフトを常に使いこなし精通するというのは事実上不可能である。
こうした問題に対して、文部科学省は、情報処理などの専門知識を持つ社会人の教育参加を促す政策を打ち出している。
とはいえ、教員資格がなくても授業に参加できる「特別免許状制度」の授与数は、IT分野以外を含めても累計で113件(平成16年4月現在)とまだ心許ない状況だ。
少子化時代で人材不足に根本的な改善が望めないとすれば、企業側も教育現場に目を向け優秀な人材の育成支援に手をさしのべるべきだろう。
BCNでは、IT産業に優秀な若い人材を招き入れるために、昨年度から「ITジュニア賞」を創設した。今号から、高専や高校の優秀な生徒を紙面で紹介する「ITジュニアの群像」(19面)という連載も開始する。IT技術に情熱をもつ若者たちを応援し、その表情と声を産業内に伝えること。紙面を通して、私たちができる支援のありかたを考えていきたい。
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