ユーザー事例 経営がITを変える
<ユーザー事例 経営がITを変える>8.山辺【上】
2006/05/29 20:29
週刊BCN 2006年05月29日vol.1139掲載
主要商材100万点をDB化
顧客の生産性を高める
中堅の工具・部品卸の山辺(長野県上田市、山辺隆久社長)は、今年度(06年9月期)末までをめどにインターネット上で商品の検索・発注ができるデジタルパーツプラットフォームの本格的な運用を開始する。これまでの紙のカタログをベースとするよりもユーザーの利便性は格段に高まる。構想は今から10年ほど前の1996年頃からスタートし、これまで40万点余りの工具や部品情報のデータベース化に取り組んできた。最終的には主要な商材を中心に約100万点のデータベース化を目指す。
デジタルパーツプラットフォームの最大の特徴は高性能な検索機能にある。山辺では約300社のメーカーからおよそ200万点の工具や部品を仕入れており、なかには同等品や代替可能な商品も多い。
主な卸先顧客である製造業を見ると、直接のユーザーである設計技師が分厚い紙のカタログを手でめくりながら設計に必要な部品を検索していた。山辺の調べではカタログに目を通すといった手作業の部品選定が作業全体の約6割を占め、本来の価値創造に当てられている時間は残りの約4割でしかない。部品選定や発注といった作業時間の短縮が大きな課題となっていた。
もし、インターネット上で詳細な技術情報にアクセスでき、納期や価格を比較しながら同等品、代替品のスムーズな検索を実現できれば生産性は飛躍的に向上する。
パソコンや携帯電話が普及し、こうしたプラットフォームを活用した音楽配信や地図検索サービスなどのデジタルコンテンツサービスが急拡大している。
ところが製造業のデジタル化を見てみると生産管理システムなど内部的に閉じた業務システムが中心であり、複数の企業が横断的に活用できるデジタルコンテンツの整備は遅れていた。
次々と登場するデジタルコンテンツサービスを見た山辺社長は、「製造立国であるにもかかわらず製造業向けのデジタルコンテンツは不足している」と痛感。
製造業の生産性を高めるデジタルコンテンツを開発すれば産業全体にとっても大きなプラスになるはずだと考えた。
開発に当たって課題も多かった。まず膨大な数の工具や部品を誰がどうやってデータベース化するかという点が最大のネックになった。
マスターデータが不完全ではデジタルパーツプラットフォームのミソである検索性能が低下することにもなりかねない。現業のかたわら自らデータ入力するのは時間的に限りがあり困難なことから、ITベンダーにマスターデータの作成を依頼したこともあった。
しかし、うまくいかなかった。(つづく)(安藤章司●取材/文)
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