視点
時計の針が戻ることはない…
2006/02/20 16:41
週刊BCN 2006年02月20日vol.1126掲載
すでにこの事件に関しては、コメントや分析、評論が溢れている。ここでそれらの是非を検討するつもりはない。
ただ、この事件がいろんな面で「あまりに酷い」ものであるがゆえに、「ネット社会」全般の信用にかかわるとの捉え方があるようだ。一般に広く、というよりも、ITの世界に近い人・専門家にそのような取り越し苦労が見られるようだ。「新しい潮流を、日本が否定する方向に向かうのではないか」との強い危惧を表明している専門家の議論を新聞紙上で目にしたことがある。もっともな懸念なりと同情するが、そこは心配することはないだろう。
今回世間のひんしゅくを買ったのは、堀江容疑者の「カネがすべて」「カネのためならなんでも」という思想と行動であった。不心得者はいつの世にもいる。ただ彼が成功の階段を駆け上がっていく姿を見て、「ヒーロー」とあがめられ、「ヒルズ族」なるものが子どもにとっての夢となっていった。
問題は、その風潮を作り上げ、肥大化させた存在に、政治という巨大なものがあるということだ。
「政治」は酷かった。ホリエモンを「弟だ、息子だ」と総選挙に引っ張り出し、大臣までもが駆けつけて絶叫し、応援した。そこは政治・選挙であるから云々するつもりはないが、問題は今回の対応である。事件となった後の「知らぬ、関係ない」を、国民はどのように見ただろうか。
モラルとか責任感といったものはどこに行ってしまったのだろうか。国民に範を示す立場の者の矜持はどこへいったのか。
ネット社会は、時計の針が「あらぬ疑いをかけられて」戻されることを懸念しているのである。だが、気にすることはない。かねてから奥田碩日本経団連会長は「日本全体でカネ目当ての国になりつつある」と警鐘を鳴らしていた。これを見ても、経済社会の本流は健全であることがわかる。
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