未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>57.Lunascape

2005/12/19 20:43

週刊BCN 2005年12月19日vol.1118掲載

国産ブラウザソフト

 日本発のブラウザソフト「Lunascape(ルナスケープ)」。現在、インターネットエクスプローラ(IE)がブラウザのデファクトスタンダード(事実上の業界標準)となっている。そんななか、2004年8月設立のLunascape(近藤秀和代表取締役兼CEO)が開発したブラウザ「ルナスケープ」のダウンロード数が増えている。その数は500万を超えた。情報処理推進機構(IPA)が開催し、今年1年間広く利用・流通したソフトを表彰する「ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー 2005」を受賞。存在感を示し始めている。

 国産ブラウザのルナスケープは元々、近藤代表取締役兼CEOが早稲田大学大学院在学中に1人で開発した。IEの「お気に入り」機能の使い勝手が悪かったことから、IEのお気に入り管理ソフトという目的で作り始めたのが発端。その後、ブラウザ自体を開発することに。約2年かけて、初期バージョンをリリースした。今年10月下旬には、バージョン3.1を投入した。

 強みは、IEに比べ軽快な動作と操作性にある。操作性では、1つのブラウザ画面に複数のウェブサイトをタブで表示可能とした。ブラウザ画面を複数立ち上げる必要がなく効率的にサイトを閲覧できるとともに、パソコンのメモリ使用量が少なく、他のアプリケーションも軽快に動く。

 ブラウザ自体はユーザーに無料で提供するため、ビジネスは、ブラウザ上に貼り付けた広告による収入と、ウェブサイト運営企業向けに、独自のブラウザソフトとしてカスタマイズする売り上げが柱になる。

 導入企業としては、トヨタ自動車が、セダンモデル「Mark-X」のブランド戦略の一環として採用した実績がある。同社の技術を使い「Mark-X」専用ブラウザを開発。デザインからアイコンまでのすべてで「Mark-X」のコンセプトに合った仕様とし、ユーザーや潜在顧客に配布した。エンドユーザーは、専用ブラウザを立ち上げると、常に「Mark-X」関連の情報を入手できるため、企業としてはプロモーションツールとして役立つ。

 近藤代表取締役兼CEOは、「ブラウザは、パソコン利用者数と同等の数のユーザーがいる。ビジネスチャンスにならないわけがない」と話す。今年度(06年3月期)の売り上げ見込みは1億円。従業員数は10人と少ないが、事業は順調に拡大中で、日本だけでなく、海外に目を向けはじめている。今年度内には英語、中国語など多言語対応する予定。「日本発のブラウザを世界に知らしめたい」と意欲的だ。(木村剛士)
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