視点

それでも国民統一コードはタブーなのか

2005/11/28 16:41

週刊BCN 2005年11月28日vol.1115掲載

 今号13面で鄭載学氏が、韓国の人口住宅調査に、ネットによる直接入力方式が導入されたと報じている。確かに、調査員が何度も戸別訪問する経費や手間を考えれば、ネットで回収するほうが効率は高いし、合理的といえるだろう。

 日本では先頃の国勢調査で、プライバシーを盾に調査を拒否する世帯が相次ぐ一方、調査票の詐取事件が起きたりと混乱を極めた。国の基本となる人口センサスがこのような状況で、日本という国は大丈夫なのかという気がしてならない。そもそも本気で行政支出を削減し、小さな政府を目指すなら、なぜネットの活用が議論の対象にあがらないのか。

 ここには本人認証というやっかいな問題が立ちはだかっている。徴兵制度をベースに国民に統一コードを割り振っている韓国と、住基ネットさえ満足に整備されていない日本では事情が異なるからだ。

 しかし、電子政府や世界最先端のIT国家を標榜するのであれば、せめて国民一人ひとりの基礎的情報や収支、納税状況くらいは一元的に把握できるデータベースがあってしかるべきだろう。いわゆる国民統一コードの導入である。

 日本が直面している問題に、破綻寸前の国家財政と年金問題がある。税収不足が深刻化する一方で、サラリーマンを除く自営業などの税の捕捉率はいぜんとして6割に満たない。年金納付の未払いに至ってはすでに35%を超えている状況だ。

 この問題の対処法は、1960年代に「グリーンカード」として検討されたが、世論の猛反発にあって潰された。課税対象所得を確実に捕捉するには、国民の預金データを名寄せして、国税庁の納税データとリンクすればいい。さらに、社会保険庁のデータベースを連動させれば、年金の納付状況までも一元的に管理できる。当然、個人情報やプライバシーの保護をめぐる議論は必至だろう。しかし、国民の義務の平等な負担という意味でも、再度こうした荒療治を検討する必要があるのではないだろうか。

 e-Japanが目指す電子政府は、行政手続きの電子化と公務員の削減の先に、国民統一コードによる公的サービスの低コスト化と税収基盤の立て直しを見据えている。公然と掲げていないだけで、暗黙の了解である。それでも国民統一コードを表立って議論することはまだ、タブーなのか?長期的な視野で、この問題を真剣に論ずる時期にあると考える。
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