e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>61.東京ユビキタス計画
2005/11/21 16:18
週刊BCN 2005年11月21日vol.1114掲載
先月13日に上野動物園で開催された「上野まちナビ実験」のオープニングセレモニーには、石原慎太郎東京都知事も出席。挨拶では、80年代後半の日米構造協議の話題を持ち出して、日本発のユビキタスプロジェクトを推進していく必要性を説き、来年の銀座での実証実験を含めて東京都の積極姿勢をアピールした。
上野の実験は、動物園や公園のなかの300か所以上にICタグ、赤外線マーカ、無線マーカを設置、実験用の携帯端末「ユビキタスコミュニケータ(UC)」を持って園内を回りながら、観光情報やナビゲーション情報を取得する。お年寄りなどのためにUCと連動できるユビキタス電動カートを用意したほか、子どもたちも参加して楽しめるようにクイズなどを出題するタッチパネル画面と無線マーカを組み合わせた情報端末も設置した。UCを持って動物の飼育舎などの前に設置されたICタグから「ucode(ユーコード)」を読み取ると、それに関連付けられた情報をインターネットから読み込んでUCに表示する仕組み。コンテンツには上野動物園の園長自ら、象やライオンを説明する動画なども用意した。
国交省の自律移動支援プロジェクトは、昨年9月から神戸市で主に身体障害者向けに移動支援情報を提供する実験が始まっているほか、今年4月には東京・浅草で外国人観光客向け情報を提供、7月に愛知万博会場内で案内支援などの実験を行い、今月から神戸市では第2期実験がスタートした。国交省は、同プロジェクトに05年度で4億9000万円を投入、来年度は7億2000万円を概算要求しており、地方にも実験の場を拡大させていく意向だ。
「道路や公園などにICタグを埋め込むのは、政府や地方自治体が社会インフラとして進めていく必要がある」(坂村教授)。ICタグの普及にとって最大のネックが、誰がICタグを括り付ける費用を負担するか、という問題だろう。来年から本格普及が始まるとされるEPCグローバルのICタグも、米ウォールマートなどの大手小売業者がICタグ付き納品を要求することで普及が進み出したが、他の小売業者にどのように広がっていくかが今後のポイント。一方、ucodeのICタグはまだ実証実験の段階だが、神戸市の中心部にはすでに約4万個ものICタグが埋め込まれ、今後いろいろな「場所」へと実験が広がることで、着実な普及が期待できる。神戸市に比べると「上野まちナビ実験」で設置されたICタグやマーカ類の300個強は少なすぎる印象だが、ナビゲーションを行う場合に、駅周辺、商店街、公園など「場所」ごとに、どれくらいの密度で設置すれば良いのかを解明する必要はある。
ICタグの情報を読み取るUCも、将来的にそれらの機能が携帯電話に搭載されるだろう。携帯電話キャリアに新たに3社の新規参入が決まり、携帯電話に無線LANやBluetoothなどの機能が搭載されるのはそう遠くないと予想されるが、それまでにサービスを利用できる「場所」がどこまで広がっているかだ。国や地方自治体がICタグやマーカ類を設置するにも限界はある。民間も参加してICタグなどの整備を進めていくための仕組みづくりを検討していく必要がありそうだ。
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