視点
カネが全てという世の中にしてはならぬ
2005/11/14 16:41
週刊BCN 2005年11月14日vol.1113掲載
ここでは村上ファンドの阪神電鉄株に絡む問題について触れる。
株を上場している以上は、それを市場で合法的に取得することには問題はない。当たり前のことだが、念のために言っておかないと、とんでもない誤解をされることがあるから困る。過日テレビの報道番組に出演してこの問題についての見解を問われた時、ある学者が「國定さんには叱られるかもしれませんが…」と前置きして前記のような基本的考え方を述べた。阪神タイガース私設応援団の役員を務める私への遠慮という善意による発言ではあろうが、極めて失礼なものである。
さて問題にしなければならないのは次のステップである。村上世彰氏は、阪神タイガース球団の株を上場しようというのである。
私は当初から「なにすんねん」という表現で応えた。これは2000万人ともいわれるファンの、すなわち優れて個別の問題である。
球団の上場問題が明らかになってきた段階で、村上氏サイドは上場はタイガースのブランド価値を高めるとし、さらにファンと球団との一体感を強めるというようなニュアンスで、上場のメリットを示した。私はこの時点で、上場許すべからずの意見をさらに強く出した。
まず、ブランド価値であるが、阪神のブランド価値はすでに充分高いところにある。あえていえば、今回の騒ぎで折角のブランド価値が下落した。
次に、これがもっとも重要なことだが、スポーツの応援をカネがらみにさせてはならない。さらに、「株」というものにほとんど関係なく過ごしてきたファンに、誤った夢を持たせてはならない。村上氏のトークだけを聞いていると、5000円の株が大変美味しく聞こえるが、株は値下がりもするものなのである。12連敗、あるいは8月にBクラス確定ともなれば間違いなく下がる。その段階でファンを驚かせてはならない。
教育上も芳しくない。「お父さん、巨人に勝ったから明日株上がるね」というような会話をさせてはならないのである。
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