e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>60.自動車保有手続きOSS(下)
2005/11/14 16:18
週刊BCN 2005年11月14日vol.1113掲載
自動車の購入は、車検を2回通す場合で6-7年に1度のこと。面倒な登録申請手続きは、代行手数料(平均3万円程度)を支払って自動車ディーラーに委託する人が圧倒的に多い。一見すると、ディーラーに委託しているようだが、有償サービスとして代理申請できるのは法的には行政書士などに限られる。このため日本自動車販売協会連合会では、各地域支部ごとに登記業務代行センターを設置して、複数の行政書士と契約。特例措置として行政書士の補助者として申請書類の作成を一括処理できる体制を構築、効率的に業務代行を行ってきた。
「国土交通省も当初、電子申請できるのは購入者本人だけで、従来の代理申請を電子化するのは『行政書士問題』もあって難しいと考えていたようだ」(自販連幹部)。自動車ディーラーが各店舗にOSS用専用端末を設置して、それを使って購入者が自ら電子申請を行う分には問題はないが、ディーラーは手数料収入の約3割を占める登録代行手数料を請求しずらくなる。
しかし、従来の自販連代行センターの仕組みのままで電子化すると、行政書士が入り込む余地がなくなってしまう。購入者は、紙による代理申請は従来どおり自動車ディーラーに委託できるのに、電子申請では売買契約を結んだあとに行政書士に代理申請を委託するか、ディーラーが無償でサービスする必要が生じてしまう。
自動車ディーラーからの代理申請は、大量の申請を処理することから、各店舗からインターネット経由で直接OSSシステムにつなげるのではなく、自販連代行センターに設置された専用システムを経由する形となる方向だ。ただし、電子申請が増えれば行政書士の仕事が減っていく、という行政書士問題が完全に決着したわけではない。
OSSの普及にとって最大の難関は、購入者が電子申請に対応した電子証明書を取得しているかどうか。個人の場合は、住民基本台帳カード(500円)を取得し、そこに公的個人認証(500円)の電子証明書と秘密鍵を書き込んでもらう必要があるが、国民にはほとんど普及していないのが実情だ。紙の申請手続きでも、住民票、印鑑登録証明書などは必ず市役所などに取りに行く必要がある。その時に何らかのインセンティブが働けば1000円払って住基カードと公的個人認証を取得する可能性も出てくる。
「国土交通省からは約3万円の代行手数料を、電子申請では1万円程度引き下げられないかとの検討依頼は来ている」(自販連幹部)。本人申請であれば代行手数料は不要となり、ディーラーの代理申請でも1万円安くすることで、住基カード取得のインセンティブを働かせようという作戦である。ただ、ディーラーの経営状況は、手数料収入によって辛うじて営業利益を確保している状況だけに「1万円もの値下げは厳しい。投資負担も重く、OSS導入のメリットは感じられない」との声も。
今後のOSS普及に向けては、国民や代理申請を行う自動車ディーラーなどの利用者に導入メリットを、いかに実感してもらうかが重要だ。運輸支局などの敷地内に出張所を併設して自動車二税を徴収してきた県税事務所では、電子申請・納税の普及で、今後は拠点集約などの合理化を進めるほか、将来的には「紙の納税証明書を廃止して、車検のときに証明書を添付せずに済むようにする」(OSS都道府県税協議会)と利便性向上を図る考え。警察署の車庫証明審査は“車庫飛ばし”などの実態を踏まえて、OSS導入後も手続きは従来のまま。現状では審査期間(東京都で平均5-7日)の短縮や手数料引き下げは難しそうだが、今後の課題として検討していく必要もあるだろう。
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