システム開発の効率化最前線

<システム開発の効率化最前線>5.日本オラクル 開発生産性の向上に寄与

2005/11/07 20:29

週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載

 日本オラクル(新宅正明社長)は、マイクロソフトの開発フレームワーク「.NETフレームワーク」上で業務アプリケーションなどを開発するベンダーに、自社のデータベースソフトを採用してもらえるよう働きかけを強めている。他社製データベースソフトよりも「開発生産性が高い」と自負する日本オラクルは、こうした自社製品の強みをシステムインテグレータ(SI)やISV(独立系ソフトウェアベンダー)などの開発ベンダーに積極的にアピールすることで、データベース製品の拡販に結びつける考えだ。(安藤章司●取材/文)

自社データベースの強みを訴求

■データベースでMSと競う

 日本オラクルとマイクロソフトは、データベース領域などで一部競合するものの、.NETアーキテクチャーを活用しビジネスの拡大を目指す団体「.NETビジネスフォーラム」(松倉哲会長=東証コンピュータシステム社長)においては、共に主要なメンバーとして活発な活動を展開している。

 .NETビジネスフォーラムでは、.NETアーキテクチャーをベースに開発した業務アプリケーションで、どちらのデータベースが開発生産性や処理速度などのパフォーマンスがより高いのかを巡って、両社で激しく競い合っている。日本オラクルはデータベースのセキュリティの高さや処理速度を向上させるため管理ツールの優位性などをアピールし、マイクロソフトは、自社製の開発ツールとの親和性の高さなどを訴求。共に一歩も譲らない。

 データベースを、どのベンダーの製品にするかは、システムの開発生産性や完成後の処理速度の速さ、維持運営のコストに大きな影響を及ぼすだけに、開発者であるSIやISVは慎重な選択が求められる。

 マイクロソフトは開発ツールの「ビジュアルスタジオ」と「SQLサーバー」との融合を進めており、ビジュアルスタジオで開発する.NETアーキテクチャーベースの業務アプリケーションのデータベースは、SQLサーバーが最適だと提案している。今月11月17日に発表するビジュアルスタジオとSQLサーバーの最新バージョンでは、従来にも増して、融合を進めている。

 こうした動きを受けて、一部の開発者の中には、最新のビジュアルスタジオを使って.NETアーキテクチャー準拠のアプリケーションを開発するときは、自然な流れとしてSQLサーバーを選択すべきだという漠然とした“イメージ”が浸透しつつある。日本オラクルでは、こうしたイメージが先行することに危機感を抱いており、「根拠に基づいた選択をして欲しい」(一志達也・日本オラクルシステム事業推進本部営業推進部データベースグループ担当マネジャー)と、開発者にオラクルデータベースを採用してもらえるようアピールしている。

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■ビジュアルスタジオ向けアドオンツールを提供

 日本オラクルでは、ビジュアルスタジオで開発した.NET対応アプリケーションを、日本オラクルの最新データベース「Oracle Database 10g(オラクルデータベース10g)」上で稼働できるようにするアドオンツール「Oracle Developer Tools for Visual Studio .NET(オラクルデベロッパーツールズ・フォー・ビジュアルスタジオ.NET)」の提供を今年8月から開始した。オラクルデータベースのライセンスを持つ開発者に限って提供されるツールで、技術者向けのサイトからダウンロードできる。

 このツールは、ビジュアルスタジオに組み込んで使うもので、ビジュアルスタジオによる業務アプリケーションの開発からオラクルデータベースへのつなぎ込みまでをスムースに行える。ビジュアルスタジオを使って業務アプリケーションを開発する開発者などが多数ダウンロードしている。

 ビジュアルスタジオを使って.NETアーキテクチャーに準拠した業務アプリケーションを開発するケースにおいても、データベースはオラクルを使いたいというユーザーや開発者の要望は根強い。「こうした需要を取り込むために役立っている」(同)と、ツールの提供は好評を得ているという。

 .NETアーキテクチャーにおいても、オラクルデータベースを選択できる選択肢を常に用意しておくことが大切だと日本オラクルでは考える。このツールは、現在、現行バージョンのビジュアルスタジオにしか対応していないが、将来においてもユーザーや開発者の選択肢を確保するため、間もなく登場するビジュアルスタジオの最新バージョンにも対応させていく予定だ。

 オラクルデータベースを選択する理由として、日本オラクルではセキュリティの高さと処理速度を速くする管理システムの機能の高さを挙げる。

 オラクルの最新のデータベースは、セキュリティを確保する上で欠かせない暗号化とアクセス権限の管理、履歴を残すなどの基本機能を装備している。これらセキュリティ機能をデータベース本体に備えることで、業務アプリケーションをつくりかえることなく、データベースのセキュリティを強化できるとしている。

 11月1日にリリースしたデータベースの新版「オラクルデータベース10gリリース2」では、セキュリティ機能がさらに強化されている。

■トラブルの原因追求をスムースに

 また、業務アプリケーション全体の処理速度を速める管理システムの機能も重要な差別化要素になるという。業務アプリケーションは、顧客が求める処理速度を実現できるように設計を行ってから開発に着手する。しかし、開発後に処理速度を測定してみたところ、当初の設計よりも遅くなる問題が往々にして発生する。

 設計した処理速度が実現できないなど想定外のトラブルが発生したときは「問題解決まで、どれだけの時間がかかるかの事前の予想は困難」(同)と、トラブルによる開発の遅れは、より深刻なものに発展しやすい危険性があると指摘する。

 こうしたトラブルの原因の解明を、よりスムースに行う機能が、最新のオラクルデータベースには組み込まれている。通常のデータベースにおける管理ツールは、データベースが正常に動いているかどうかを管理することに主眼が置かれることが多い。だが、オラクルデータベースの管理ツールは、処理速度が遅くなっている原因がどこにあるのか、セキュリティの脆弱性がどこにあるのかなどを自己診断し、開発者に報告する機能が備わっている。

 開発者は、管理ツールから上がってきた報告をもとに、処理速度が低下している原因を探し出し、修正を加えることで当初設計した処理速度を実現する手直しを容易に行うことができる。 同社は「管理ツールの機能の高さは、他のデータベースにはない利点」(同)とし、これを.NETアーキテクチャー対応の業務アプリケーションの開発にも適用していけば、開発の生産性は大幅に高まると指摘する。

 日本オラクルが.NETビジネスフォーラムに参加し、マイクロソフトと共にお互いのデータベースの強みを明確化していることに対して、フォーラムのメンバーから評価する声が相次いであがっている。.NETアーキテクチャー対応の業務アプリケーションの開発生産性の向上に向けて、ベンダー各社の競争がより活発化することが期待される。
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