“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日
<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>26.楽天を焦らせたもの(2)
2005/11/07 16:04
週刊BCN 2005年11月07日vol.1112掲載
1つは、インタビュアーが「(TBSと経営統合した際に)楽天とギャオは競合関係になるのか」と質問した時。三木谷氏は、「テレビとネットの融合は、メディアとしてはオープンな雑誌のようなもの」と答えた。
「雑誌のようなもの」の心は、テレビのように少数のプレーヤーが市場、コンテンツを独占するのではなく、雑誌のように雑多なプレーヤーが現れ、コンテンツ自体はシェアしながらも、切り口や付加価値で競い合う。
この通りなら、楽天が目指しているのは、様々なテレビ局と幅広く提携する、水平分業的な配信ポータルのようにも思える。
そうすると、どうして経営リスクを背負ってまで(実際に生命線の株価が急落している)、テレビ局の1つでしかないTBSを囲い込みに走るのか、理解に苦しむ。
もう1つ興味深かったのは、インタビュアーが、経営統合後のモデルとして米タイムワーナーを引き合いに出した際、三木谷氏が「どちらかと言えば、バイアコムに近い」と語ったこと。
米メディア大手のバイアコムは、音楽番組制作「MTV」、米3大地上波の1つ「CBS」、映画会社「パラマウント」などを傘下に持ち、売上高は2兆円を超える。多くのメディア企業を統合したコングロマリットだ(ただ、2006年に分割する予定)。
ライブドアの堀江貴文氏もニッポン放送買収に絡んで、「ドイツのベルテルスマンのようにグローバルに展開して急成長している例もあるのに、国内で安穏としている日本のテレビ局を見ると、本当にもったいないと思う」ともらしていたのが印象的だった。
ネット界の寵児には、複数のメディアを統合して、グローバルな規模で数兆円のビジネスを展開する“メディア帝国”を好む傾向があるようだ。その中では、ネット配信など一部でしかない。
その野望は、必ずしも的はずれとはいえまい。しかし、太平の眠りを、無理矢理かき乱されたテレビ局にとってみれば、あまりに刺激が強すぎるかもしれない。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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