“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日
<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>22.ソフトバンクの新戦略(3)
2005/10/10 16:04
週刊BCN 2005年10月10日vol.1108掲載
前号では、準キー局・地方局がネット配信に参画する思惑を取り上げた。放送枠が限られる彼らにとって、ネット配信は無尽蔵な枠を持つ媒体となる。
では、条件に恵まれた在京キー局5社がソフトバンクと組む思惑とはどのようなものなのか。
キー局5社はすでに何らかの形でネット配信事業を展開している。テレビ東京はいち早く2001年春から、フジテレビは今夏からネット配信サービスを立ち上げ、日本テレビは今秋にも手掛け始める発表をしている。
また、総務省が地上デジタル放送のIP同時再送信の解禁を決定する7月末まで、キー局は配信権、編集権などを盾に難視聴地域の自治体が行うネット配信すら認めていなかった。
それがソフトバンクというネット界のパワーハウスと組むとは、変われば変わるものだ。
確かに、コンテンツ流通の活性化を目指す総務省、媒体のマルチ化を推進する電通の意向も見え隠れするが、キー局側の意識変化も小さくないだろう。
「盤石だったキー局の事業にもかげりが見え始めている。番組制作力があるうちに、ビジネスモデルを徐々に再編したいと考えているのではないか」(地方局の営業担当者)。今回のソフトバンクとの提携をこのように見る放送業界関係者がいる。
テレビは若い世代を中心に、視聴時間でネットに追い抜かれつつある。広告費が高い割に根拠となる視聴率統計のサンプル数が少なく、その信ぴょう性は以前から疑問視されていたが、コマーシャルの削除が簡単に行えるHDDレコーダーの登場で、ますます根拠が薄弱となりつつある。テレビ広告が伸びる余地は少ない。
1950年代、映画が全盛を誇っていた頃、テレビは媒体として見下され、俳優もテレビ主演を嫌がった。それが人びとの生活のパーソナル化により、テレビは隆盛を誇った。だからこそテレビ局は、究極のパーソナル化をもたらすネットが、媒体の盛衰を左右する力を持つと確信を深めたのかもしれない。(坂口正憲(ジャーナリスト))
- 1