大遊泳時代
<大遊泳時代>第86回 印刷とITの融合
2005/09/26 16:18
週刊BCN 2005年09月26日vol.1106掲載
松下電器産業 顧問 前川洋一郎
ケープタウンで50か国・700人が集まった世界印刷会議での主な議論は何だったかと業界大手、廣済堂の長代厚生社長にお話を伺った。グーテンベルグ以来、560年経ったが、ペーパーは不滅など、目からウロコの思いであった。第1は、印刷とITの融合である。データ加工、制作、印刷技術、配達、流通のIT化は当たり前として、顧客サイドでの両者の融合には感心した。
例えば、求人情報のフリーペーパーは無料で、エリアを絞って大量配布。詳しくは、ネットのウェブへ、そして、今すぐお申し込みは携帯で──と釣り糸をたぐっていくトリプルプレイで、生産性向上は著しいとのこと。
第2は、良いコンテンツある限り、紙は永遠であること。カラオケの歌詞本は通信HDDとなり、デンモク早見本(電子目次本)となってなくなるかと思いきや、なくならない。データベース化してあり、新曲はその都度追加して、毎月新曲本を出し、10万曲の総集編は3か月に1回。やはり、紙の一覧性は人間にとって不可欠──今もカラオケ本は業界最大の印刷物だそうである。
第3が、セキュリティ、個人情報、公共性のバランスが難しいこと。紙は記録に残り、なおのこと大量コピーが可能だから、頭が痛い。ここはマスコミも含めて人間らしさ、礼の心が少しあれば、解決することも多いはず。
最後に、出版文化、音楽文化の不況不振がいわれるなか、本質の強み、価値をなくしてはいけないが、過去の延長線上の技術、過去からの顧客のマンネリ行動に甘えていると、破壊的技術のイノベーションと顧客の行動変化に取り残される。いつまでもフレッシュなアントレプレナーシップが必要である。
ねぇ、ワトソン君!!、「電子BOOKはカラオケ早見本とか携帯マンガ、携帯小説で芽が出てきたね」。「やはり、しつこいことがアントレプレナーシップの原点ですね!」。
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