“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>20.ソフトバンクの新戦略(1)

2005/09/26 16:04

週刊BCN 2005年09月26日vol.1106掲載

 USENの無料ブロードバンド放送「GyaO(ギャオ)」の動向が影響を与えたのだろうか。

 9月16日、テレビ番組のネット配信に向け、ソフトバンクと民放キー局5社の協議が大詰めを迎えているというニュースが流れた。ソフトバンクと民放側で配信会社を設立。広告モデルの無料放送(主にビデオオンデマンド方式)を手がける。広告最大手の電通も絡むという。

 一応、ソフトバンクは「現状では何も決まっていない」としているが、全否定ではないところを見ると、リークされた情報は、ほぼ事実なのだろう。

 ソフトバンクグループでは、2003年春からBBケーブル(BBテレビ)がIPテレビ事業を手がけているが、こちらは有料放送だ。会員数が数万人レベルで事業は伸び悩んでいる。

 今回のニュースは、無料放送の“新会社”を設立するという点にポイントがある。つまり、ソフトバンクは、有料放送事業に見切りを付けたと思われるのだ。

 7月末、シンポジウムに参加したBBケーブル関係者は、同時期に総務省が地上デジタル放送のIP同時再送信を認めたことを受け、「これで今後は、普通のテレビ局としてコンテンツを集められる」とホッとしていた。

 その言葉からは、今回の提携劇が水面下で進んでいることは感じられなかった。BBケーブルもあずかり知らぬところで、ソフトバンク本体と民放トップ層の交渉が進んでいたのだろう。

 どの通信事業者もトリプルプレイ(ネット接続・IP電話・放送)の確立を目指している。ネット接続とIP電話で確固たる地位を占めるソフトバンクにとって、放送事業の遅々とした歩みは我慢ならなかった。

 「孫正義ソフトバンク社長の性格からすると、同業のUSENに無料放送で先行されたことで頭にきて、下へ相当にハッパをかけたのだろう」(ライバルの通信事業者関係者)。

 今後、ヤフーBB(ネット接続)、BBフォン(IP電話)で見られたような一大攻勢があるかもしれない。民放キー局そろってのバックアップがあるのなら、USENを追い抜くのも難しくないだろう。

 だが、本当に民放側はネット界の雄、ソフトバンクと手を組むことを覚悟したのだろうか。
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