“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>19.試金石となるギャオの成否

2005/09/19 16:04

週刊BCN 2005年09月19日vol.1105掲載

 前回、USENの無料ブロードバンド放送「GyaO(ギャオ)」に対しては、民放キー局と大手代理店の独占にあえぐ放送業界の一部からも期待する声があると述べた。

 それにしても、広告モデルの無料放送を成功させるには、単純に視聴者数を増やしていくしかない。番組によっては、大手スポンサーも徐々についているが、本当に定着するかどうかはこれからの実績次第だ。

 広告媒体の中でもネット広告は、クライアントからシビアに“実数”が求められる。インプレッション保証と呼ぶ、広告の表示回数を保証するタイプの広告も多い。ギャオの場合、番組途中に入るストリーミング広告が表示1回で数円程度とすれば、ビジネスを成り立たせるには相当の視聴数が必要だ。

 無料放送という敷居の低さから会員登録は順調に増えるだろうが、実視聴数を増やすのは容易ではない。前々回で指摘した通り、1会員当たり延べ視聴回数が10回程度では、収益的はかなり厳しいだろう。そして当然、視聴数を増やすには、コンテンツの魅力を高めるしかない。

 ただ、ネット上で登録会員の声を拾ってみると、コンテンツラインアップに対する評価は徐々に高まっているようだ。

 業界関係者からも評価する声は聞かれる。「スタート時点は魅力的なコンテンツがあまりなく、先行きが危ぶまれたが、最近は音楽を中心にコンテンツが充実してきている。エイベックスを傘下に持っているので、今後もいろいろな仕掛けが可能だろう」(中堅広告代理店)。

 ここ数か月でも、USENはコンテンツ拡充に向け、積極的に動いている。ナムコから映画会社の日活を買収しようとしたり、プロ野球の生中継を試みたりしている。

 日活の場合は労組、プロ野球中継の場合は既得権者の抵抗にあい、計画は途中でとん挫しているが、「ギャオに対する投資意欲は本物」(前出の代理店)という印象を業界に与えた。

 傘下にある映画配給会社、ギャガ・コミュニケーションズも業績が回復しており、自主制作を強化する姿勢を見せ、ギャオとのシナジーを狙っている。

 USENのギャオは、国内でIPテレビがどれぐらい普及するかの試金石となるかもしれない。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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