e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>50.官民連携ポータル(上)
2005/09/05 16:18
週刊BCN 2005年09月05日vol.1103掲載
インターネットの普及に伴って、官民双方で申請手続きの電子化が進んできているが、その最大のメリットは、窓口まで出向かなくて手続きが済むだけでなく、バラバラに行ってきた手続きを一括して行えるワンストップ化にあると言われてきた。経産省でも2002年度補正予算で官民連携ポータル事業に着手。松下電器産業を中心に会社設立のためのポータルサイト「創業ナビ」を立ち上げたが、実証実験が終わった段階で閉鎖されている。民間が中心となってポータルサイトを永続的に運営していくには収益確保が不可欠となるが、手続きのワンストップ化だけで利用者から料金徴収することは難しく、ビジネスモデルを構築するまでに至らなかったという。
技術的にも難しい問題があった。OSSのイメージは、ポータルサイトに書き込まれた情報を、必要に応じてそれぞれの役所や企業に振り分けて配信するというものだったが、ポータルサイトに集まる情報には利用者の個人情報が多く含まれる。万一、情報漏えいなどの問題が発生した場合の責任をどうするのか。ポータルサイトの民間運営者がその責任を取るにはリスクが大きすぎると考えられた。さらに、電子認証サービスが普及していない段階で、成りすましの問題にどう対応するのか。OSSには不可欠なデータの標準化をどう確保するのか。問題が山積していた。
経産省の実証事業が壁に突き当たる一方で、独自にOSSを立ち上げてきたのが東京電力だ。02年1月から引っ越しにともなう手続きを一括で受け付けるポータルサイト「引越れんらく帳」を開設。現在では東電、東京ガス、東京都水道局、NHKなど14事業者を対象に引っ越し手続きの一括申し込みを受け付けている。当初から新規ビジネスとしてではなく、顧客サービスの一環という位置づけになっており、東電が運営する消費者向け生活情報サイト「テポーレ」のサービスメニューの1つとして、運営費用の多くは東電が負担しながらサービス拡大を図ってきた。OSSを新規ビジネスとして取り組もうとして挫折する企業が相次ぐなかで生き残ってきた理由と言える。
東電がワンストップ化を実現するのに採用したのが「ウェブリンク方式」。引っ越し手続きに必要な氏名、住所などの共通情報だけをポータルサイトで入力したあとは、連携事業者の個別インターネット受付ページに飛んで、事業者ごとの個別情報を入力して手続きを完了させる仕組み。利用者にとって共通情報部分は各事業者のページに引き継がれるため入力する手間が省けるメリットがある。引越れんらく帳を立ち上げてきた下田喜宏・新規事業推進本部ホームネットワークグループ担当マネージャーも、「最初はすべての情報をポータルサイトで受け付けて振り分ける方法を考えた」というが、「東電でも管理・保護しなければならない共通情報までは保持するが、他の事業者の個別情報まで持つのではリスクが大きい」との判断でウェブリンク方式を導入。共通情報を引き継ぐためのデータ標準も決め、連携事業者を着実に増やしてきた。
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