“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>17.相手の土俵に乗るUSEN

2005/09/05 16:04

週刊BCN 2005年09月05日vol.1103掲載

 前号では、IPテレビを離陸させる起爆剤(音楽配信におけるiPodのような存在)は現れるだろうかと述べた。

 iPodの域とは言わないが、USENが手がける無料IPテレビ「ギャオ」が面白い動きを見せる。USENは最近、映画配給のギャガ・コミュニケーションズ、レコード会社のエイベックスを傘下に収めるなど、総合メディア企業を目指している。

 ギャオは一般のテレビ局のように広告モデルで運営されており、他のIPテレビとは違ってユーザーが契約するISPや回線サービスの種類を問わず、誰もが会員登録だけで視聴できる。

 ビデオオンデマンド(VOD)方式で提供されるコンテンツが常時300本以上アップされており、映画、ドラマ、音楽、アニメ、スポーツなどジャンルは幅広い。話題の“韓流ドラマ”にも力を入れており、あの「冬のソナタ」も全20話が無料で観られる。

 ギャオの会員数は8月末で180万人を超えている。開局は今年の4月下旬、会員数100万人を突破したのは7月初旬。かなりのスピードと言える。

 ギャオの動向は、会員数の推移以外はほとんどオープンになっていないので、放送業界関係者も気になっているようだ。ある民法キー局の関係者は、「会員数が伸びていると言っても、どれぐらい実視聴があるのか」と懐疑的な目を向けていた。

 会員数が100万人を超えた時点で、USENの宇野康秀社長は自身のブログ上で「延べ視聴者は1100万人」と述べているので、1会員当たり10回ほど視聴している計算である。

 これが多いのか少ないのか。IPテレビ事業者の1人は、期待と警戒を込めてこう言う。

 「10回程度だと広告モデルは成り立たないだろう。ただ、無料のIPテレビとして先駆けたアドバンテージは大きい。今後のコンテンツ次第では大化けするかもしれない」。

 有料のBS・CS放送が登場して長らく経った現在でも、「テレビは無料」という視聴者の意識は根強く、無料の地上波局が放送業界では圧倒的な力を持つ。一般のIPテレビ事業者と違って、USENはあえて相手の土俵(広告モデル)に乗った。この戦略が吉と出るか凶と出るか。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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