ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>16.今や、「創生期」から「普及期」へ進展(最終回)

2005/08/29 16:18

週刊BCN 2005年08月29日vol.1102掲載

 ソフトウェア大手のコンピュータ・アソシエイツ(CA)がITILを志向し始めたのは2001年に遡る。この時期は、ITILの「サービスサポート」と「サービスデリバリ」が改訂された頃で、国内ITベンダーのなかでも先駆的な存在だ。

 CAでは、01年に「iCan(アイキャン)プロバイダ・スイート」の名称で、ソフト課金からSLA(サービスレベルアグリーメント)管理までを網羅した統合ソリューションを提供し、ITILを前面に押し出した展開を開始している。

 現在では、ITILに準拠した企業のIT運用管理を検証するアセスメントや導入に向けたコンサルティングのほか、「ITIL実践コース」としてITILの資格取得やフレームワークを理解する4つのコースを、ITIL普及団体の「itSMF」を創設したメンバー、カナダのピンクエレファントと協業して提供している。

 01-02年当時と現在のITIL普及度について、同コースを担当するCAの前田隆・エデュケーションサービスレプリゼンタティブは、「2年ほど前までは、同コースに参加する人はシステムインテグレータ(SI)が中心だった。しかし、現在は企業の情報システム担当者や経営者が大半を占める」と、ユーザー企業レベルまでITILが浸透し始めたと見ている。

 CAが提供する製品群「Uni center(ユニセンター)サービスマネジメント・ソリューション」は、従来から各機能間がITILベースで密接に統合できるように設計され、ITILで運用効率を上げる情報統合の仕組みである「MDB」の構築を簡単に実現できる。

 しかし、国内ではITILを導入することによるIT運用管理のコスト削減効果に関する認識が薄く、「アセスメントやコンサルティングのサービスのニーズはあるが、製品導入がこれに比例していなかった」(張統・営業本部システム・マネジメント営業統括統括部長)と嘆く。そこで、コスト効果を明確にすることで、製品導入を加速させようと、ITILの「サービスデリバリ」に構成された「ITサービス財務管理」と「ITサービス継続性管理」に着目した戦略を始めている。

 CAでは、同社のアセスメントや教育などを経て、ITILベースでの製品導入を具体化することを「プラティカル(実践的な)ITIL」と呼び、さまざまな対策を講じている。その1つが、8月の米ニク・コーポレーションの買収だ。ニクのポートフォリオ製品により、ITIL導入のコスト効果やプロジェクト管理を明確化して、ユーザー企業の経営者が導入を決断しやすいようにした。

 張統括部長は、「国内では、SIを含めITILのプレーヤーが格段に増えた」と、日本でもITILが「普及期」に差し掛かっていると分析している。この認識は、今や国内全体に広がろうとしている。
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