“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日
<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>13.多メディア化を模索するキー局
2005/08/01 16:04
週刊BCN 2005年08月01日vol.1099掲載
その事業構想では、地上波で流すドラマ、バラエティー、ニュースなどをVOD向けに短く編集し直して配信。1年以内に1万本のコンテンツを用意し、早期に会員100万人を目指す。将来的には、保有する約18万本のコンテンツをライブラリー化し、リアルタイムなニュース配信も手掛ける計画という。
先にVOD事業参入を表明したフジテレビジョンと比べると、日本テレビの事業計画はかなり踏み込んだものとなっている。特にコンテンツ単位の課金だけでなく、ポータル機能を生かして広告収入を狙う点も強調している。
この連載で話を聞いた複数の放送業界関係者が、異口同音に「テレビ局のビジネスはもはや曲がり角」と指摘している。
日本テレビと言えば、看板番組の巨人戦の視聴率低迷が騒がれているが、それは巨人軍の不調だけが原因ではなく、「既存のテレビが娯楽の王者である時代が終わりつつある」(業界関係者)ことも意味するだろう。
連載初回、若年層ではネット利用時間がテレビ視聴時間を上回り始めていると紹介したが、視聴者のテレビ離れは緩やかに進行しているとの指摘は少なくない。
多くの番組を録りため、関心のある部分だけを“つまみ見”できる情報家電の普及により、視聴率と広告料金の関係見直しも業界内ではささやかれている。
つまり、今は高収益を誇る民放キー局も地上波独占による膨大な広告収入の上にあぐらをかいていられない。「真剣に多メディア化に取り組まざるを得ない時代となってきた」(同上)。
そうなれば、ブロードバンド環境が整ってきた現在、民放キー局がVOD配信のビジネス機会を具体的に検討しない方がおかしい。1つのコンテンツを、より多くのメディアで流通させることができれば、コンテンツホルダーの収益は確実に上がる。
ネット配信の支障になると言われた著作権問題も、「その気になれば何とかなること」だったことが分かりつつある。次号ではその問題を取り上げよう。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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