総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って
<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>37(最終回).セシモ(下)
2005/07/25 16:18
週刊BCN 2005年07月25日vol.1098掲載
ペーパーレス化と情報共有を推進
セシモでは、1995年頃から瓦本体や留め具、防水用シールなど部材単品で受注する方式の見直しに着手。屋根瓦の設計図面および住宅全体の詳細な図面情報を住宅メーカーなど発注元から取り寄せ、この図面に基づいて屋根瓦に必要な部材を出荷する方式へと徐々に移行してきた。部材の受発注を行う卸業中心の業態を改め、設計図面の情報をもとに、マーケティング活動や新商品の開発、リサイクルなどを住宅メーカーなどの顧客と共同して進めていく専門商社としての体制をより強化するためだ。図面による受注を始めて問題となったのが、ファクシミリから大量に吐き出される紙の図面の管理である。出力された図面は、原価積算や施工など社内外の担当者にコピーして配布しなければならない。セシモでは平均して1か月に約400棟分の受注があり、1棟あたり平均5枚程度の図面がある。1か月の間にファクシミリで受注する図面の枚数は単純計算で約2000枚にのぼり、これら原版のコピー分も含めれば、管理しなければならない枚数はさらに増える。紙ベースでは社内の情報共有もスムースにいかないこともあった。
ペーパーレスと情報共有の解決方法として、セシモのITパートナーである群馬リコーは文書管理システム「Ridoc Document System(リドックドキュメントシステム)」と、マイクロソフトのグループウェア「グループボード」をセシモに提案した。ペーパーレス化と情報共有を必要としていたセシモは、群馬リコーの提案を受け入れ、2004年4月にリドックドキュメントシステムを立ち上げ、同年8月にグループボードを稼働させた。
リドックドキュメントシステムの導入後は、ファクシミリで受信した図面をデジタルデータとしてサーバーに保管できるようになった。ファクシミリから直接紙へ出力することはなくなったわけだ。
また、これまで受信した図面をコピーして担当者へ手渡ししていたが、デジタル保存が可能になったことでネットワーク上で図面のデータをやりとりすることができるようになり、「図面を管理する工数が大幅に減った」(セシモの瀬下康人・専務取締役)と作業効率の向上に結びつけた。
住宅メーカーなどと共同でマーケティングなどを進めるセシモにとって、社内の文書管理や情報共有は欠かせない要素だと判断したことが、一連のITシステムを導入した背景にある。リドックドキュメントシステムに続いて、グループボードが稼働したことで、社内の情報共有が「よりスムースになった」(同)と、日々の業務やマーケティング活動の効率化が大幅に進んだ。
群馬リコーでは、オフィスにパソコンやプリンタ複合機が普及したことが、セシモのように電子的な文書管理への要望やグループウェアの導入を「後押ししている」(群馬リコーの柴田伊佐男・販売事業部高崎支店支店長)と分析する。社員1人1人にパソコンが普及していない段階では、電子的な文書管理よりも、紙ベースの管理の方が主流であることが多かったが、社員にパソコンが普及し、社内ネットワークに接続できる環境が整い始めてからは、ネットワーク上での文書管理や情報共有を行う需要が高まったという。
また、プリンタ複合機は、紙文書をデジタル化するスキャナを搭載しており、既存の紙文書をスキャナを使ってデジタル化して保存する動きも「活発化」(群馬リコーの奥澤佳世・事業統括本部ソリューション推進室ITサービスグループ)してきた。セシモでも、プリンタ複合機と共にリドックドキュメントシステムを導入し、ファクシミリのペーパーレス化や複合機を活用したペーパーレス化を積極的に進めている。
バブル期に比べて土地や家屋の値段は下がってきた。価格競争が激しくなるのと同時に、住宅のトレンドや販売ターゲットも常に変化している。少し前までは南仏など南欧風の住宅が大流行し、新興住宅地に行けば、黄土色や薄い橙色など明るい色の住宅が増えた。ところが、明るく柔らかい色の住宅が増えてくるに従って、その反動で今度は“シンプルモダン”と呼ばれる住宅が人気を集めるようになった。激しく移り変わる住宅業界で、旧態依然の業務フローを続けていては勝ち残れないのが実情だ。
現在、住宅購入の中心層は団塊ジュニアの世代だと言われているが、その購入動向を詳しく分析してみると、最終的に家のテイストやデザインを決める主導権は彼らの妻が握っている比率が高い。「われわれのメインターゲットは団塊ジュニアである夫よりも年齢が低いことが多い妻の世代」(同)と、団塊ジュニアよりも後の70年代後半に生まれた世代に徐々に軸足を移しつつあるという。セシモでは、今後もITをフルに活用することで市場の動きを先取りし、より付加価値の高い製品やサービスを提供する専門商社として業績を伸ばしていく方針だ。(安藤章司)
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