大遊泳時代

<大遊泳時代>第77回 カラオケとコンテンツ

2005/07/18 16:18

週刊BCN 2005年07月18日vol.1097掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 「カラオケ」でイグノーベル賞を受賞した井上大祐氏のカラオケ創業の半世紀を描いた映画「カラオケ人生紙一重」が公開された。

 今流行の国道沿いのシネマコンプレックスに行ってみた。150─250席のミニシアターが7つ。いつでも好きな時に好きなものを見られるわけである。映画館に入って驚いた。カラオケがテーマだから、中年親父ばかりかと思うと大違い。ほとんどがギャル、コギャル。ネクタイをしていて恥ずかしい。

 映画のテーマは、リストラを経てリタイアに向かう団塊世代の親父への応援歌である。「ごくろうさん、親父」である。それなのに、なぜ若い女性ばかりなのか、しばらくして解かった。主役の押尾学の人気である。

 始まる前に満席。立ち見かと思いきや、今のギャルはコンビニ前と電車内のうんちゃん座りで慣れたもの。通路に整然と座っていく。これには参った。

 映画の中身は、井上大祐氏を通じて、男たるもの、親父たるものの生き方を教えている。ターゲットは中年だが、若い女性が見ても実に良い話ではないか。家に帰って、ふっと考えることがあるのではないかと思った。

 売れないバンドマン、昔ながらの純愛、リストラでの自殺未遂、仕事バカで離婚されるカッコつけ、そんな中から、ひょっとした縁でテープ伴奏をし、カラオケを生み出し、また、落ち込んでいく人生…。

 カラオケは、8トラックからレーザーディスク、そして通信BOX、インターネットとスピードを出しつつ、カーブを上手く切ってきたようだ。今、世は変わってITブーム。スピードとカーブにはお互い気をつけなくては。音楽配信も1歩1歩進んでいたら、突然走り出し、HDD(ハードディスクドライブ)か半導体か、MIDIかMPEGかの分かれ道である。

 ねぇ、ワトソン君!「こんな時こそコンテンツを大事にしないといけないね!」。「そうですよ。カラオケも良いコンテンツあってのカラオケですよ」。
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