総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って
<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>36.セシモ(上)
2005/07/18 16:18
週刊BCN 2005年07月18日vol.1097掲載
屋根瓦の図面をデータベース化
住宅様式の需要が南欧風からシンプルモダンへ移っている──。住宅業界はその時々のトレンドが明確にあり、住宅メーカーなどは次に来る“トレンドの波”をつかもうと常に市場動向をキャッチするアンテナを張り巡らせている。こうした住宅メーカーに対して、屋根瓦の分野でさまざまな提案活動を行っているのがセシモである。住宅メーカーだけでなく、住宅用壁材や瓦メーカーなどとも密接に情報を交換しながら、「住宅市場のトレンドの先取り」(瀬下康人・専務取締役)に取り組んでいる。セシモは屋根瓦の専門商社だが、住宅市場全体の動きを詳細に分析することで、住宅メーカーの商品開発・販売促進に貢献し、結果的に自社で取り扱う屋根瓦の拡販に結びつけている。
セシモがマーケティングに力を入れ、大手住宅メーカーとの連携を本格的に始めたのは1995年頃から。それ以前は屋根瓦を専門とする、いわゆる町の中小施工業者に瓦を卸販売する業態だった。バブル経済が崩壊し、中小施工業者が縮小していくなか、生き残りを賭けて大手住宅メーカーとの取り引き拡大を進めてきた。95年当時は施工業者向けの卸販売が売上高の約8割を占めていたが、昨年度(05年6月期)は住宅メーカー向けの売上高が約6割を占めるまで拡大した。こうした取り組みにより、00年6月期の連結売上高が約10億円だったのに対し、昨年度は約18億円に達するなど、ここ5年で大幅に事業を拡大してきた。
住宅メーカーとの取り引きが拡大するのに伴い、受注方法も変えた。通常、屋根の施工には、瓦本体や留め具、防水用シールなど15-20種類の部材が必要となる。95年頃までは部材単位での受注がメインだったが、それ以降は住宅メーカーなどが設計した図面で注文を受ける方法を取り入れた。これによって、屋根瓦全体の状況が把握でき、かつ必要な部材だけを過不足なく的確に納品できるようになった。昨年度は図面での受注が全体の約8割を占めるまでになった。
さらに、受注した屋根瓦の図面と住宅の詳細情報をデータベース化し、デジタルデータとして長期保存している。昨年度1年間で受注した住宅用屋根瓦は約5000戸分に上る。データベース化することで、どこの住宅に、どういった屋根瓦を、いつ納品したかを瞬時に検索することができ、こうした情報は住宅メーカーなどによる保守メンテナンスやリフォームに役立てている。
屋根瓦の寿命は一般的に30年以上と言われているが、5-10年単位でこまめに手入れをしないと寿命が短くなることもある。社会問題になっている悪質なリフォーム業者からユーザーを守るためにも、大手住宅メーカーを中心にユーザーの住宅の部品1つ1つに至るまでデータベース化し、保守メンテナンスの品質向上に努めるところも増えている。
図面のデータベース化は02年に着手し、すでに99年以降のデータ入力を完了した。今年度(06年6月期)末までには、図面で受注を始めた「95年にまでさかのぼってデータベース化を完了」(浅田尚江・業務担当)する予定だ。
データベース化により、リサイクルの促進も期待されている。瓦は基本的に土を焼き固めた素材を使っているため、リサイクルしやすい住宅建材である。現在でも不要になった瓦を粉砕して、ブロックや培養土などにリサイクルしているが、将来はリサイクル技術をさらに高めて不要になった屋根瓦を原料にした屋根瓦の開発や、構造材や内装材、外壁への応用を目指す。
ブロックや培養土は、原料となった瓦よりも付加価値が相対的に低いが、新しい瓦や住宅建材に再生すれば付加価値はさらに高まる可能性がある。少子高齢化などで住宅着工件数の減少が見込まれる将来を生き残るためには、「付加価値の高いリサイクルができる技術と仕組みの確立が欠かせない」(瀬下専務)と、納入した瓦をデータベース化することで、瓦が古くなった時のリサイクルを効率良く行える仕組みづくりに力を入れる。住宅メーカーも、リサイクルの技量がある業者との取り引き拡大を望んでいるという。
次回は、群馬リコーのドキュメント管理システムを活用して、膨大な量の図面を効率良く管理することに成功したセシモの取り組みを紹介する。(安藤章司)
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