“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>10.カギを握る「IP同時再送信」

2005/07/11 16:04

週刊BCN 2005年07月11日vol.1096掲載

 ここ数回、ネットを伝送路とするテレビ放送は技術的に可能かということを見てきた。

 現実には、公衆網のインターネットであろうと、閉鎖型のネットワークであろうと、通信プロトコルにIPを使った地上波テレビ放送の「同時再送信」は認められていない。テレビ局側が拒否しているからだ。

 IP方式の同時再送信。放送と通信の融合を語るうえでは、これがキーワードとなってくる(ビデオデマンド方式の非同時再送信については別途説明する)。

 地上波テレビの同時再送信そのものは、CATV(ケーブルテレビ)事業者がすでに行っている。放送事業者が受信したテレビ放送を自前のケーブル回線を介して契約世帯に届ける。主に難視聴対策として使われる。

 だが、IP方式となると話が違ってくる。CATVの同時再送信の場合、元のコンテンツに対する変換が一切伴わないのに対して、IP方式はIPパケットに変換してから再送信するからだ。

 そのために、「変換される過程でコンテンツの品質が劣化したり、加工される恐れがある。いったんパケットとなったら、インターネット上でどのように転送されるかも分からない。著作権の問題が深く絡んでくる」と、テレビ局側は反対する。

 しかも、IP方式なら東京の事業者が北海道や沖縄にも同時再送信できるわけだから、キー局のコンテンツを“再送信”している地方局の存在意義がなくなる。将来的には、放送業界の秩序を崩す可能性を秘める。テレビ局側が頑なに拒否するわけだ。

 そのため、BBケーブルのような全国規模で事業を行うブロードバンド放送事業者に対して、テレビ局側がIP方式の同時再送信を認めない(コンテンツを提供しない)のは当然だろう。

 さらに、長野県栄村のように難視聴対策としてブロードバンド回線を使ったIP方式の同時再送信に取り組もうとしている自治体に対しても認めていない。

 しかし、地上デジタル放送は原理的にアナログ放送に比べて多くの難視聴地域を生むとされる。これに対して、現状でも難視聴地域を多く抱える島根県は、WDM(波長分割多重)技術を用いたFTTHサービスによる同時再送信の可能性を探っている。実は、NHKもその研究を進めている。

 詳しくは、次号で述べよう。
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