ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>10.ITILで「責任の所在」明確化

2005/07/04 16:18

週刊BCN 2005年07月04日vol.1095掲載

 ユーザー企業のシステム保守・運用サービスを行う場合、特に問題となるのが、「責任の所在」が不明確であることだ。システム障害(インシデント)が発生した場合に、「誰がどう対処すべきか」を規定していないことが少なくない。日立電子サービス(日立電サ)では、「本来は、運用側で対処すべきトラブルにも関わらず、システム開発ベンダーに障害処理をエスカレーション(依頼・伝達)することが多い」(宮入勉・理事主管技師長)と、現状を分析する。

 ユーザー企業のシステムはオープン化にともない、ハードやソフトなどのマルチベンダー化が進み、複雑・混在化している。「責任の所在」や障害対処のプロセスが不明確であるが故に、「システム運用上の“各種隙間”(対応の複雑化や遅れ)が増えている。この隙間を埋めるのが保守・運用ベンダーの役目」(宮入主管技師長)と日立電サでは見ている。

 富士通サポートアンドサービス(Fsas)も、「とかく、ユーザー企業と保守・運用ベンダーの契約が『仲良しクラブ』になっている」(佐藤昭博・サービスビジネス本部サービス企画部第二サービス企画部長)と、契約上の不明確さを比喩を示しこう指摘している。

 このため、Fsasは、保守・運用サービスのSOA(ステート・オブ・ワークス=作業範囲記述書)を作成して、ユーザー企業と業務内容の責任分担を明確化することを重視している。その上で、ITIL準拠のSLA(サービスレベルアグリーメント)をユーザー企業と締結している。「これにより、運用側、利用側の双方の不満が解消され、効果的な運用を実現できる」(佐藤企画部長)という。

 ユーザー企業側の業務プロセスや「責任の所在」をITILなどで明確化することで、「感覚的には、オンサイト(常駐型)からセンター型(リモート監視)の運用へ移行してくる」(佐藤企画部長)と見ている。これにより、「従来は、障害発生にともない人材を派遣していたが、その必要性が減る。24時間常駐者を置くことも減る。センター側で業務効率を図れば、当社の収益改善にも結びつく」(同)と、ITIL適用による保守・運用ベンダーの効果のほどを語る。

 日立電サもFsasとほぼ同じ見解だ。「ユーザー企業に常駐して問題点を肌で感じるオンサイトは重要。だが、ITILを適用して運用を効率化することで、リモート監視とオンサイトを融合した『バーチャルオンサイト』的なサービスに移行できている」(宮入技師長)と、人月単価で行う保守・運用サポートが「センター型」へ移行し始めているようだ。
  • 1