システム開発の効率化最前線
<システム開発の効率化最前線>1.日本ユニシス 独自のミドルウェアで差別化
2005/07/04 20:29
週刊BCN 2005年07月04日vol.1095掲載
開発基盤強化で収益力高める
■「MIDMOST for .NET」を今年2月から出荷.NETビジネスフォーラムの運営委員を務める日本ユニシスは、2002年9月から.NETフレームワークを活用したシステム開発の専任組織を立ち上げ、率先して.NETビジネスの拡大に努めてきた。04年度(05年3月期)は、.NETフレームワークを基盤としたシステム開発関連で、前年度比約2倍の売上高103億円を達成し、今年度(06年3月期)は、同事業で倍増の200億円を目指している。.NETフレームワークを活用した大型案件の受注が好調であることが売り上げ拡大につながっている。
今年2月には、日本ユニシスが独自に開発したミドルウェアで、基幹業務を支えるオープンシステム基盤「MID MOST(ミッドモスト)」シリーズの1つとして.NETフレームワーク対応版「MIDMOST for .NET(ミッドモスト・フォー・ドットネット)」の出荷を始めた。このミドルウェアは、.NETフレームワークを活用したミッションクリティカルな基幹システムの構築ノウハウを集約して製品化した。
「MIDMOST for .NET」は、システム停止が許されないミッションクリティカルなシステムで必要とされるトランザクション制御や障害対応支援、運行制御支援などの細かなコントロールを可能とする機能を備えている。これにより、大規模ミッションクリティカルシステムで、.NETフレームワークだけでは不足する機能を補い、「基幹システムへの.NETフレームワークの採用を促進させている」(今道正博・AD CoE .NETテクノロジコンサルティングセンター長)ことが他社との差別化に結びつき、.NETビジネスの業績を押し上げた。
「MIDMOST for .NET」の出荷に合わせて、同社のシステム開発で従来から使用する.NET上でのシステム構築を支援するオリジナルの開発手法「LUCINA for .NET(ルキナ・フォー・ドットネット)」に、「MIDMOST for .NET」を活用したミッションクリティカルなシステム構築のノウハウを盛り込むことで、開発手法の高度化も推し進めている。
.NETフレームワークが提供する開発基盤は、開発効率を大幅に高める効果があり、日本ユニシスでは「LUCINA for .NET」の効果も合わせ、他の開発基盤を採用した場合と比較しても1-2割程度のコストを削減することに成功した。同時に、近年注目されているサービス指向アーキテクチャ(SOA)ベースのシステム開発の比率を増やすことで、失敗プロジェクトや赤字プロジェクトのリスクを大幅に軽減させている。そのためには、開発基盤の整備や開発手法の見直しが欠かせない要素となっていることは明確だ。
■.NETとはSOAを実現する概念
.NETビジネスフォーラムに参加するメンバーの多くは、日本ユニシスのような先進的な取り組みを率先して行っている。その効果も後押しして、.NETフレームワークで基幹系システムを構築する顧客企業は着実に増えており、「.NET関連の市場そのものが拡大している」(今道センター長)と、.NET市場が拡大基調にあると指摘する。
だが、.NETをビジネスとして捉えたとき、その先進性がややもすれば曖昧になる傾向がある。マイクロソフトが.NETの構想を発表してからおよそ5年が経過しようとしている今、.NETの定義を改めて確認したい。
マイクロソフトが考案した「.NET」とは、SOAを実現する概念であり、これを支えるプラットフォームが「.NETフレームワーク」である。.NETビジネスフォーラムにおいても、.NETフレームワーク上で.NETが目指すSOAベースの業務システムの開発を推進しており、日本ユニシスにおける.NET関連の売上増の背景にも、同社が提案する.NETフレームワークベースのSOAを顧客企業が高く評価している点が挙げられる。
顧客の情報システムが高度化、複雑化するなかで、大規模な業務システムの開発は時間や資金が膨大にかかり、それだけにリスクも高まる。SOAでは、大規模な業務システムを密接不可分な1つの塊として見るのではなく、個別の業務を担うアプリケーションである「サービス」の集合と捉え、サービス同士をXMLウェブサービスなど標準的な接続方式でつなぎ合わせる開発手法を基礎とする。.NETフレームワークは、個々のサービスを開発する基盤としての役割を担い、これらをXMLウェブサービスで結びつけることで、まとまった1つの大規模システムとして機能させる。
■.NETフレームワークで大規模システム開発も
顧客企業のビジネスの形態は常に変化していくため、情報システムもそれに合わせて柔軟に手直しできる仕組みが求められている。SOAでは、個々の業務に対応したサービスを組み合わせて構築するため、業務に変更が発生した時は、その業務を処理するサービスを交換、手直しすれば対応できる。システム全体をつくり替える必要はない。大規模な案件になればなるほどSOAを採用する利点は大きく、実際に「SOAを採用する傾向が強まっている」(尾島良司・AD CoE .NETテクノロジコンサルティングエンタープライズアーキテクト)と、SOAをベースとしたシステム開発は当たり前になりつつあるという。
SOAを採用しても、個々の業務に対応したサービスは、ソフトベンダーやシステムインテグレータ(SI)が開発しなければならない。このサービスを開発する基盤として機能するのが.NETフレームワークである。.NETの構想そのものがSOAを目指したものであるため、その開発基盤であるフレームワークで開発した業務アプリケーションはSOAに標準で対応することができる。さらに開発生産性も高いという利点もある。
.NETビジネスフォーラムで意見交換される案件のなかには、SOAではない従来型の業務システムの開発に.NETフレームワークを適用する事例も依然として多い。.NETフレームワークがSOA以外の個別の業務アプリケーションの開発を効率化するのにも役立つためで、今後もこうした使われ方は残ると見られている。一方、SOAを取り入れた大規模な業務システムの開発も盛んに行われており、将来は.NETフレームワークを活用したSOAベースのシステム開発の比率が高まるものと期待されている。
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