ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>9.保守ベンダーもITILで台頭

2005/06/27 16:18

週刊BCN 2005年06月27日vol.1094掲載

 「ユーザーサポートで人的要因に頼る部分が多すぎる」――。製薬大手の日本ベーリンガーインゲルハイムは昨年12月、富士通サポートアンドサービス(Fsas)の協力を受け、ITILに準拠したシステムの運用を開始した。同案件に関して、Fsasの佐藤昭博・サービスビジネス本部サービス企画部第二サービス企画部長は、「システム運用にあたり、目標の数値設定と計測による可視化などに取り組んだが、人的なプロセスの改善、システム運用の最適化を図れた」と胸を張る。

 Fsasは、日本ベーリンガーと共同で取り組んだITIL準拠のシステム運用のノウハウを基に、運用サービスの拡大を目指し「ITILに準拠した運用サービス」の商品化を開始。現在100人在籍するITILの初級資格「ファウンデーション」の有資格者を今年度(2006年3月期)中に300人に増員して、ITIL準拠のシステム運用を拡大する計画だ。

 Fsasと同様に保守・運用サポートベンダーでは、ITサービスに関連する部分が大きいだけにITILへの関心が高い。NECフィールディング(FILDG)も、2002年からITILの導入に取り組み、その間、グループ横断の「ITIL導入検討プロジェクト」を立ち上げた。

 FILDGがITILに取り組んだ理由は、「例えば、ハードウェア保守の受付窓口では、24時間365日のサポートへの要求が増大していた。これを含め、保守サポート全般で迅速なインシデント解決にも限界が生じていた」(富永正敏・マーケティング本部シニアエキスパート)と、保守・運用サポートを請け負うユーザー企業をITIL準拠にして、こうした課題の解決を目指した。

 日立電子サービス(日立電サ)は、このなかでもITILに基づく運用管理サービスを早期に取り組み始め、90年代後半に事業化へ向けITIL適用の検討をしている。同社も、「無駄なインシデントがユーザー企業で発生していた」(宮入勉・理事主管技師長)ことが、ITIL適用の理由だ。

 日立電サは、ITIL普及団体の英国itSMF認定の「BS15000」を、保守・運用ベンダーとして国内で初めて取得した。「システム運用改革は、企業経営を最適化させるために必要不可欠で、その手法の1つがITILだ」(宮入技師長)と話す。

 大手メーカー系の保守・運用サポートベンダーに共通しているのは、「ユーザー企業のシステム運用をITILで最適化」することで、より多くの顧客を獲得することだ。次号以降でこうした傾向について述べる。
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