ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>8.ITIL準拠+付加価値の争いに

2005/06/13 16:18

週刊BCN 2005年06月13日vol.1092掲載

 ITILの国内普及団体「itSMFジャパン」が設立されたのは2003年5月。その年の9月、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は、コンサルティングやシステム構築支援を手がける社内の仮想組織「ITILマネジメント・オフィス」を新設した。「ITILの認定資格者を有する現業部門を支援するとともに、部署の壁を越え専門知識を共有する」(大塚哲夫・ストラテジー&コンピテンシーITサービスマネジメント推進担当)のが目的だ。

 欧州のIBM UKでは、ITILの価値を業界でいち早く認め、ITILの開発初期段階から参画した。これを発端にIBMは世界的にITILを自社ビジネスに導入した。すでに1500人を超えるITIL認定技術者が世界37か国に在籍しているという。国内でも「itSMFジャパン」の設立にグローバルメンバーとして参画するなど、先導的な役割を果たしている。

 それでも、「ITILの浸透が始まり、ユーザー企業からITILベースの保守・運用サポートを要請されるようになったのは、04年後半」(大塚担当)という。日本IBMでも金融機関を中心にした重要顧客から要望が出始めたのはこの頃という。

 その理由は、「ユーザー企業の経営層が、これまで目を向けていなかった保守・運用サポートへ関心を示すようになった」(同)ためと説明する。つまり、システムの安定稼動やセキュリティの確保、コスト削減──などの面でITILの利用価値があると、ユーザー企業が認識し始めていることが、ここへきて浮き彫りになっでいるのだ。

 日本IBMのITILへの取り組みは、現状のシステムを診断(アセスメント)してIT部門の効率化を進言する「コンサルティング」、ITILのベストプラクティスを組み込んだ運用プロセスや管理システムを実装する「システム構築」、構築後の運用管理サービスを提供する「アウトソーシング」がある。この際、ITILが定義する運用プロセスを支援する管理ツールとして「チボリ」を提供している。

 ユーザー企業にITILベースの保守・運用サポートを提供する上で、「システム開発の提案段階から、運用面との整合性をとる必要がある」(大塚担当)と、システム開発と運用を結びつけてITILを構築する必要性を強調する。

 日本IBMと同様にコンサルティングから実装、アウトソーシングを提供する大手ITメーカーはすでに、富士通、NEC、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、日立製作所など多岐にわたる。日立の場合、日本IBMの「チボリ」に当たる運用管理ツールとして「JP1」を持つ。「今後、早い段階でITILが浸透する。各ベンダーは同じ土俵でITIL準拠のシステム構築で競争することになるが、他社と違う付加価値をユーザー企業にどう提供するかが問われるようになる」(大塚担当)と、ITIL準拠を希望するユーザー企業が増えれば、ベンダー間の獲得競争も熾烈になりそうである。(企画編集取材班)

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