フレッシュマンセミナー ITの常識

<フレッシュマンセミナー ITの常識>10.特許権と知財ビジネス

2005/06/13 16:04

週刊BCN 2005年06月13日vol.1092掲載

 2月1日、東京地裁は、ジャストシステムの日本語ワープロソフト「一太郎」および統合グラフィックスソフト「花子」において松下電器産業の特許権を侵害する部分があるとして製造・販売を禁止、製品破棄を命ずる判決を言い渡した。侵害したとされる部分は、「ヘルプ」ボタンをマウスでクリックした直後に「ボタン」などをクリックすると、そのボタンなどの機能説明が表示されるというものだ。

 判決には、即販売停止となる仮執行宣言は付かず、ジャストシステムも判決を不服として2月8日に東京高裁に控訴した。このため、これらのソフトがすぐに市場から姿を消すこともなく、2005年版も予定通り発売された。一太郎は20年前に投入され、日本語変換の容易さなどから一時はワープロソフト市場で約80%のシェアを誇った。この件は、今年4月に東京高裁に設置された知的財産高等裁判所で裁判官5人の大合議により審理されることになった。

 この問題は、知的財産を企業戦略の柱に据えたビジネスについて、多くの関心を呼んだ。というのも、このところ少しは景気回復がうかがえるとはいえ、企業は売り上げ自体の伸びはまだ少ないと感じており、そのための活路の1つとして、企業が持つ知的財産をもとに巨額の特許料獲得を目指す取り組みが強化される気運にあるからだ。

 知的財産権には、特許権や商標権、著作権などがある。02年には、政府は知的財産戦略大綱を策定した。知的財産権に関する体制の整備こそが産業を活性化させる道として、知的財産検定が開始されたり、関連の学問分野も登場するなど盛り上がりをみせている。だが一方、中小規模事業者も多いIT業界では、こうしたことが企業の死活問題に関わる重要なことでもあり、現実にはそれほど容易ではない部分もありそうだ。(真実井宣崇)
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