ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>7.運用プロセスの可視化が重要

2005/06/06 16:18

週刊BCN 2005年06月06日vol.1091掲載

 マイクロソフトは、ITILをベースに独自に集約した総合的運用ガイダンス「MOF(マイクロソフト・オペレーションズ・フレームワーク)」を確立するなど、ITサービスを強化している。単にソフトウェアを販売するだけでなく、「運用フェーズを見越したシステム構築ができるようにパートナー各社に情報を提供する」(鈴木和典・エンタープライズ・サービス担当執行役)のがMOF作成の目的だ。

 ユーザー企業の中には、マイクロソフト製品のライセンスを取得しても、企業内に水平展開できない場合が少なくない。特にサーバー系のソフトはパラメータやチューニングなどの設定がシステム別に違うため、導入してすぐに安定的な運用を保証できないケースが増えている。

 現在、日本のマイクロソフトでは、「コンサルティングエクスプレス」として、システム設計や要件定義、概要設計などのノウハウや手順書をパッケージ化して提供している。これに加え、ITILやMOFを応用したシステム構築や運用段階の手順書をパッケージ化することを計画中だ。これに、既存ソフトを組み合わせ、ITサービスのソリューションとして来年度(2006年7月期)初めにもパートナーに提供する。

 鈴木執行役は、ITILを自社のITサービスで活用したことについて次のように語る。「システム運用のうち特にプロセスの部分は、統合運用ツールを利用したり、優秀なSE(システムエンジニア)が何とか動かしてきた。しかし、ここにきてシステム停止などで運用面の投資が増え、現状の保守・運用サービスを疑問視するようになった」。ITILを適用することで、“属人的”なシステム運用の本質を変え、継続的なシステム改善に必要な投資額や運用プロセスを可視化することができるという。

 一方、日立製作所の八木隆・ITソリューション部主任技師は、ITILベースでシステム運用をしたいというユーザー企業のニーズが高まっているとの感触を得ている。「ITILに取り組もうと考える企業の多くは、システム運用に何らかの問題を抱えている」。ユーザー企業のシステム担当者は、経営者から年々増加する運用コストを低減するよう要求される。だが、運用コストを減らせば、逆にシステムの運用効率を悪化させかねないジレンマを抱えている。

 日立製作所の統合運用管理ソフト「JP1」は、バージョン7i製品群が提供する機能がITILのプロセスに大部分が適用可能。しかし、「人間系のプロセス」は同ソフトでカバーできないため、「ITサービスマネジメント」を提供している。同社独自のアセスメントシートを利用して、ユーザー企業の現状の運用プロセスを調査。ここで浮き彫りになった問題点を体系的に整理して、新たな業務の流れを設計する。「悪しき組織の壁を取り払う」(八木主任技師)ことが、このマネジメントの役目でもある。
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