“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日

<“ライブドア騒動”から垣間見える 2011年 ネットをTVが流れる日>3.テレビ局という奇異な業界(2)

2005/05/23 16:04

週刊BCN 2005年05月23日vol.1089掲載

 前号では、地方局を包含する在京民放キー5局と大手新聞社が強く結び付いたメディア業界は、世界的にみて奇異な状況だと述べた(米国でもメディア業界のクロスオーナーシップは昨夏まで禁止されていた)。

 国内の広告市場は、2004年で約5兆8600億円。そのうちテレビ・ラジオと新聞で56%を占めるが、民放キー5局が属する大手メディアグループの占有率の高さは容易に想像できる。

 東京・汐留の豪奢なビル群を見てみれば、民放キー5局が謳歌している状況の一端が分かる。

 まず、日本テレビの巨艦ビルが眼に入り、その背後には、同社などテレビ局が持つ広告枠の代理販売で筆頭に立つ電通の本社。そして共同通信の新社屋だ。かつて同社は電通の全株式の30%近くを保有し、電通が上場した際にその一部を放出。その売却益を新社屋建設に充てた。

 この状況は長らく固定化されてきたし、変わる兆しも見えなかった。今回のライブドア騒動が起こるまで、民放キー5局の存在を脅かす新規参入は考えられなかったからだ。そしてライブドアの試みが“失敗”に終わったことで、「もうあり得ない」との観測も強まっている。

 社会の経験則から言えば、競争のない世界は往々にして停滞しやすい(メディア自身が常々そう指摘しているように)。

 確かに、テレビ局の制作現場では、視聴率をコンマ1のレベルで他局と激しく競い合っているが、構造的には民放キー5局で固定化された世界である。

 同じように大手5社で寡占化していた自動車業界では、3社が経営に行き詰まり、外資に救済されたが、そのうち1社は今でも再建中で先行きが見えない。民放キー5局でそのような状況は(制度的にも)考えられない。

 ライブドア騒動の際、フジテレビは抗弁として「放送は公器」という主張を持ち出した。

 このフジ側の主張には、ライブドアの行動を支持するしないに関係なく、鼻白んだ人は少なくなかったようだ。何しろ、あのトヨタ自動車の社員平均年収が800万円強に対し、フジテレビは1500万円を超える。

 まさしく公器を私企業が独占することで、人並み以上に潤うという奇異な状況がそこにある。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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