視点
すべての液晶デバイスで本を
2005/05/16 16:41
週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載
道を付けたソフト、azur(アジュール)の開発元であるボイジャーは、デジタルカメラやビデオまで例示して、「今そこにある液晶デバイスを本に」とけしかける。これまでゲームには縁がなかったが、高解像度の画面で読んでから、PSPが電子本ハードとして魅力的にみえてきた。
今回の全液晶電子本化計画のキーワードは、画像化だ。パソコン上のazurでイメージに変換した「紙面」を液晶デバイスで読む。
作品の供給源となる青空文庫のxhtmlファイルでは、日本語組み版に固有の表現がタグやコメントに置き換えられている。azurはこれを書籍そのままに縦組み再現する。その実態は、一風変わったウェブブラウザなので、長文ページを読む際に重宝する。
とここまでは、従来版のazurでもできた。そこに新版で加わったのが画像の書き出しだ。読書機として利用する液晶デバイスや、携帯電話のメモリカード・リーダー/ライターをパソコンに接続し、azurのメニューから利用する機器の画面サイズを指定して書き出しを実行。すると、ページ番号と進み加減を示すガイドマーカーの付いた「紙面」が連番のjpeg画像として書き出される。高度な組み版再現力、美しい文字は、当然画像上にも反映される。
画像には、検索が効かない、フォントやサイズを変更できない、容量が膨らむといったマイナスがある。その代わり、azurの画像化電子本には、デバイス側のテキスト表示機能整備や、ファイル形式への対応を待たず、今ある電子本ファイルをたいがいの液晶デバイスにもっていけるという読者本意の柔軟性がある。同社の電子本フォーマット、ドットブックに対応したT-Timeにも画像書き出し機能が加わった。ウェブ上の「本」はazur経由で、ドットブックはT-Time経由でというシナリオだ。
画像化の陰に隠れたが、新版のazurは基本機能にも磨きをかけている。キャッシュが効いて、ページ移動が軽い。タグの対応範囲も広がり、長文サイト向けに常用したくなる。いくつか気になっていたバグもとれた。電子読書が本物になってきた。
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