総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って
<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>27.イマジンプラス(上)
2005/05/16 16:18
週刊BCN 2005年05月16日vol.1088掲載
情報セキュリティに取り組む
イマジンプラスでは、派遣スタッフの個人情報を扱う「スタッフ情報管理システム」を社内外の脅威から守る情報セキュリティ対策と、派遣先企業の機密情報を守るためスタッフの情報モラル教育の2点に焦点を当てて投資を行ってきた。「スタッフ情報管理システム」とは、顧客が求める最適な人材を的確に割り出して派遣するため、イマジンプラスが創業以来積み上げてきた重要な人材データベースだ。「人材派遣サービスは人材とその情報が命。情報漏えいなど重大な情報セキュリティ事件を起こして信頼を失っては元も子もない」(笹川社長)と、情報セキュリティの重要性を強く認識する。
イマジンプラスの創業は1997年。ITバブルで市場が盛り上がり、販促イベントやフィールドサポート、ヘルプデスク、ウェブ制作などIT関連の人材不足が深刻化していた。「当時、IT関連の知識を身につけた若い女性が、イベント会場などでパソコンを自分の手で箱から出し、手際よくセッティングしていく様は、パソコンメーカーの方々から新鮮な感動をもって受け入れられた」(笹川社長)と、顧客企業から高く評価された。
IT関連に特化して創業したことや、創業当時、すでにコンピュータウイルスや外部からの不正侵入の問題が顕在化していたため、社内ネットワークに接続するすべてのクライアントパソコンにウイルス感染を予防するウイルス対策ソフトを導入したり、外部からの不正侵入を防ぐファイアウォールの設定するなど基礎的なセキュリティ対策には力を入れてきた。「スタッフ情報管理システム」などの重要データの定期的なバックアップも行った。
創業当時は人的にも予算的にも厳しかったこともあり、社内のスタッフ教育や企業研修を担当するインストラクターが手分けして、情報セキュリティ対策を行わざるを得なかった。ウイルス対策やデータのバックアップなどの重要性を意識しながらも、専任の情報セキュリティ担当者が置けなかったのが現実だった。
イマジンプラスの人材派遣サービスは、予想を上回る勢いで伸びた。仕事の量は増え、売り上げは右肩上がり。社員や派遣スタッフの数も急増した。情報システムは拡張を重ね、複雑化し、情報セキュリティはより高度なものを求められるようになった。
創業5年目の01年には、インストラクターを主な業務とする社員が通常業務と並行して管理できる限界に達した。「人材とその情報が命」(同)である人材派遣会社にとって、情報セキュリティはますますその重要度を増した。これを受けて情報セキュリティを含む情報システム専任の担当者を設置することを決めた。専任者は企業の情報システム管理の経験が豊富な人材を外部から招いた。
イマジンプラスでは、専任担当者を置いて「スタッフ情報管理システム」など社内の情報セキュリティを強化すると同時に、派遣スタッフの情報モラル教育にも力を入れた。派遣スタッフは派遣先企業の機密情報に触れるケースもあり、基本的な情報モラル教育は欠かせないと判断したからだ。
就業先が決まった派遣スタッフに情報モラルに関する講習を受講させ、イマジンプラスの営業担当者が派遣先企業を訪問したとき、派遣スタッフに情報セキュリティに関する指導を行うなどの施策を打った。必要に応じて派遣スタッフ向けの給与明細の中に情報セキュリティの重要性を説いた資料も同封した。「機会あるごとに、何度でも繰り返し情報セキュリティの重要性を訴えている」(同)と、地道な努力で派遣スタッフのセキュリティ意識を高めている。
派遣先企業では、業務効率を高めるために善意でインストールしたソフトウェアが、実は重大なセキュリティホールを作ってしまったり、ログオンしたまま離席したパソコンから情報漏えいが発生するなどの危険性が常に潜んでいる。派遣スタッフ向けの教育コンテンツを拡充させ、日頃から情報セキュリティに対する意識を高めておくことが、派遣先でのセキュリティ事故を未然に防ぐことにつながる。
昨年12月には社内で蓄積した情報モラルに関する教育コンテンツを編集し、「知らなかった!ではすまされないデジタル・ビジネスマナー30の基本-情報化時代の新仕事の常識-」(翔泳社)として本にまとめた。今年6月をめどに、情報モラルに関するコンテンツを映像化し、就業先が決まった派遣スタッフの教材の1つとして使う準備も進めている。
次号では、より具体的な情報セキュリティの取り組みを紹介する。(安藤章司)
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