視点
時代は動き出した
2005/05/02 16:41
週刊BCN 2005年05月02日vol.1087掲載
ニッポン放送、フジテレビジョン、産経新聞など当事者たる企業の当惑振りは察するに余りあるが、今回の問題の特色の1つは、ことがマスコミあるいはメディア論にかかわるということであろうし、それが議論を多様化・混乱させ底知れぬ沼のごとき状況に立ち至ったということであろう。
さらに言えば報道の量が多い故に、問題の本質からそれ、あるいは、意味のない方向に散乱しているかの感がある。空港で、ホテルで、ホリエモンにぶら下がり取材をするレポーター(記者ということさえ憚られるレベルの)の質問に応対する氏の困惑顔に同情する。
要は、「現在の法律のもとではどうなのか」という「現実論」であるべきである。しかるに世に溢れるのは「法律が悪い。法律はどうあるべきか」という「立法論」か、「日本的でない。文化・感情を無視している」との「道義論」が中心になっているのである。社員が嫌がっているとか、社員が株主を選ぶべきであるとか、タレントの何某は今後出演を拒否するとか、一般受けしそうな「報道」も結構なされた。
しかし、基本は「法治国であるから、法を守れ」ということである。新株予約権とか、焦土作戦などというのは、「?」のつくものである。
「法の盲点を狙ったずるい方法」とかいう批判もあるが、そもそも法には裁量行政を排するという目的もあり、従って、法の範囲内のことは許されると解するべきなのである。
今回のこと(と、一括りにするにはあまりにも多様な問題を含むものではあるが)は世界の流れであり、日本もいよいよ本格的にその時代に突入したことを示している。心情的には不愉快さをともなうものではあろうが、止められる流れではない。「強いものは、より強く」の時代が現実になってきたのである。ビジネスの世界では、「世界」と「日本」が接近し、繋がり始めた。
もちろん無条件にこれを是とするものではない。政治のレベルで現状をしっかりと把握し、何が真に国民の利益につながるかという方向に向かって手を打つべきではある。
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