e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>34.評価専門調査会第4次報告─國領二郎慶大教授に聞く─

2005/05/02 16:18

週刊BCN 2005年05月02日vol.1087掲載

 IT戦略本部の評価専門調査会(庄山悦彦座長=日立製作所社長)が、e-Japan戦略の取り組みを評価するための「IT利用環境指標」と「成果指標」を盛り込んだ第4次中間報告書を公表した。座長代理を務める國領二郎・慶應義塾大学教授に、報告書の狙いや調査会の今後の活動について話を伺った。(ジャーナリスト 千葉利宏)

◇    ◇

 ――調査会が活動して1年が経過した。

 國領 調査会は「PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクル」と「利用者視点に立った成果指標」を、政府の戦略の中に定着させることに力を注いできた。かなり時間がかかったかもしれないが、だいぶ定着してきたとの思いはある。評価と言っても成績表に○や×をつけるのが目的ではなく、問題を発見して、継続的に対策が講じられていくプロセスをつくること、何よりも対話が行われていくことが重要だと考えてきた。各府省ともかなり突っ込んだ議論を行い、戦略を推進するため時には嫌味なことも言って、強い反発が返ってきたこともあるが、対話を通じて調査会の活動が受け入れられたと思っている。

 ――1年で4つもの報告をまとめたが。

 國領 IT戦略本部が2月にまとめたIT政策パッケージ-2005には、昨年12月に公表した第3次報告の医療に関する提言が盛り込まれたし、教育・人材を重点強化した第4次報告も途中段階で提言内容の情報を提供して反映された。調査会が課題を指摘し、IT戦略本部で手当てがされるというサイクルができてきた。中間報告も、当初は4つも出す予定はなかったが、2005年のスパートに向けて意味ある活動にするには、早い段階で積極的に提言を行う必要があると考えた。間際になって報告書を出してもしょうがないわけで、今年の11月末に予定している報告書は、06年以降の取り組みに役立つ内容にしたいと考えている。

 ――第4次報告では70近い指標が候補として列記された。

 國領 成果指標を得るのが難しいことは十分に認識している。今年の秋ぐらいになって、いきなり「このデータが欲しい」と言っても揃えられないだろうし、今の段階で「この指標で評価する」とコミットしても結果が出せなければ意味がない。問題意識に沿った内容の報告を書くのに必要な成果指標が得られればと思っている。

 ――特に必要と考えている指標は。

 國領 どうしても欲しいと思っている指標に限って難しいものが多い。医療についても、電子カルテの普及率のデータは得られても、医療の質がいくら上がったのかに言及するために必要となる指標を得るのは難しい。ただ、いろいろなアイデアは出てきており、手応えは感じている。定性的に、国民にとってITで生活が良くなったかどうかを判断いただけるような指標が得られるように努力していきたい。指標としては、重点5分野、先導的7分野に、技術などを含めた15分野程度を評価するのに必要なものを揃えたいが、大事なのは、05年までを総括する報告を書く上での論点をどこに置くか。その論点に対してデータとなる指標が揃うかが重要だ。

 ――評価される側は、指標がどう評価されるかが気になる?

 國領 なぜ、前倒しして成果指標の候補をオープンにしたかと言えば、「こんな指標で評価されるんじゃ適わない」というものがあれば言ってきて欲しいという意味もある。もちろん、評価する場合には、その数字だけで見るのではなく、国際比較で見たり、経年変化で見たり、さまざまな角度から評価するが、これだけお金を使って、コンピュータなどの機械も買って「ほとんど使われていません」というのも困る。各府省のIT担当者は熱心で真面目に取り組んではいても、課題が別のところにあって進んでいないケースもあるだろう。調査会では、全体を見通して、いかに適切なフィードバックを与えることができるかが重要だと考えている。11月末を目処ににまとめる報告書では、05年までの施策で何が良かったのか、05年以降の施策では何が必要なのか。その情報を提供できればと考えている。
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