息吹くXMLウェブサービス

<息吹くXMLウェブサービス>第7回 イースト XMLウェブサービスでアプリケーションを連携

2005/05/02 20:42

週刊BCN 2005年05月02日vol.1087掲載

 イースト(久野幸雄社長)は、ソーシャルネットワークを中核としたコミュニケーションツール群「ビズパル(BizPal)」に、XMLウェブサービス対応のアプリケーションを複数連結した統合コミュニケーションサービスの販売を本格化する。従来からある電子メールやホームページの機能を拡張することで使い勝手を大幅に改善し、これに各種アプリケーションの機能を付加することで、企業や官公庁、学会、協議会、ユーザーグループ、研究機関など幅広い層に売り込む。(安藤章司●取材/文)

統合コミュニケーションサービス立ち上げ、ソーシャルネットワークを中核に

■ウェブが“読み書き”出来る媒体に発展

 イーストは、電子メールやホームページの発展の延長線上にソーシャルネットワークやブログがあると見ている。

 日記形式で、誰でも簡単にウェブ上に文章や画像を公開できるブログは、ここ数年で爆発的に普及している。従来、ホームページなどウェブ上のコンテンツは“読む”ことが主体だったが、ブログというツールをウェブに付加することで、ウェブは“読み書き”できる媒体に大きく発展した。

 これと同じように、ソーシャルネットワークは、すでに広く普及している電子メールの欠点を補う機能として、使い勝手を改善するツールだとイーストでは考える。電子メールは個人にアドレスが割り当てられ、基本的に1対1のコミュニケーションに軸足を置いたツールである。ソーシャルネットワークでは、個人に軸足を置きつつも、特定の社会(ソーシャル)をつくり、ネットワークで結ぶことを可能にする。

 一見すると、掲示板やグループウェアに似ているが、電子メールという個人をベースに構築されたネットワークであるという発想が根本的に異なる。

 掲示板は、匿名性が強く不特定多数によるネットワークであるのに対して、ソーシャルネットワークは特定のメンバーのみが参加し、個人の属性が明らかになっていることが特徴だ。グループウェアは、すでに存在している組織にあてはめることが多いのに対して、ソーシャルネットワークは、メンバーの同意さえあれば、誰でも参加できる。

 イーストの下川和男・専務取締役は、「ウェブや電子メールは、すでに確立された技術であり、これがなくなるとは考えにくい。ブログやソーシャルネットワークは、これら確立された技術を、さらに使いやすくするための付加機能」だと位置づける。

 こうした考えに基づき、イーストは今年3月15日、ソーシャルネットワークを中核としたオリジナルのコミュニケーションサービス「ビズパル」を立ち上げた。ビズパルは、ソーシャルネットワークとブログ、電子メールを使ったメーリングリストの3つの要素を組み合わせた。ビズパルは、XMLウェブサービスの接続口を持っており、インターネット上にあるXMLウェブサービス対応のさまざまなサービスを取り込めるようにした。

■辞書検索など、各種サービスと連携

 イーストでは、XMLウェブサービス対応の自社サービスを複数持っており、まずは、これら自社サービスとビズパルを連携させる。すでにサービスを始めている郵便番号と住所を照合するサービス「ぽすたん(Postan)」、辞書検索サービス「ビートニック(BTONIC)」の2つに加え、東京ガス・エンジニアリングなどと共同して運営している地理情報システム「ジオープ(GeOAP)」や、今後、独自にサービスを始める鉄道路線検索サービスの「レールゴー(RailGo)」などとも連携する。

 すでに確立された技術である電子メールとウェブを基盤として、ソーシャルネットワークとブログを付加し、さらに各種XMLウェブサービスと連携させることで、次世代のコミュニケーションプラットフォームを構築する考えだ。

 販売ターゲットは、一般企業や学会、研究会、協議会、ユーザー会、ミニコミなど。グループウェアと異なり、個人をベースとしていることから、学会や研究会、協議会など組織の壁を越えて交流するケースにより適しているという。すでに、学会や協議会などへの納入が一部決まっており、一般企業からも引き合いが急増しているという。

 今年4月4日には、日本電子公証機構(菊田昌弘社長)などと協業して、ビズパルにおける発言(書き込み)の時刻や内容を認証する付加機能「サイネストラボノート(Synest LaboNote)」を開発した。発言した時刻や内容を、第3者が証明する仕組みを付加することで、研究団体などが新しい技術を開発するときのアイデアの実在性、時刻を記録し、将来においての工業所有権や著作権などの係争を事前に回避することができるという。

 イーストでは、ビズパルを中心とする次世代のコミュニケーションサービスを自社が運営するデータセンターを基盤として、ASP(アプリケーションの期間貸し)方式でサービスを提供する。辞書検索サービスや地理情報システム、鉄道路線検索サービスなどは、顧客の要望に応じて取捨選択し、有料でサービスを提供する。自社のデータセンターを活用した上で、ビズパル本体の利用料や付加サービスの利用料を得ることで収益性を高める。

■「ビズパル」本格化に伴い、新データセンターを開設

 2002年9月、イーストは自前のデータセンター「.NETデータセンター」を開設し、さまざまなASPサービスの提供やアウトソーシングを受注してきた。これまでにウェブ系のサービスを中心に約200種類のサービスを収容してきた.NETデータセンターだが、今回のビズパルの本格的な立ち上げにともない、今年4月1日に新しいデータセンター「.NETデータセンター2」を開設した。

 複数のアプリケーションをインターネットで有機的に結びつけるXMLウェブサービスでは、サービスが1つでも停止すると他のサービスにも悪影響が出てくる。このため.NETデータセンター2では「アプリケーションをこれまで以上に安定して運用できる設備」(下川専務)を揃えた。

 イーストの05年4月期の売上高は約14億円だが、今後、2-3年のうちにビズパルを中心とする次世代コミュニケーションサービス事業で、新たに年間10億円の売り上げを上乗せする。

 ソーシャルネットワークやブログ、XMLウェブサービスは、すべてのサービスがインターネット上へ移行している技術トレンドに照らし合わせて「正しい技術」(同)だとイーストでは断言する。技術の進む方向を見極め、正しい方向へ進むことが、ソフトウェア開発ベンダーやユーザーに大きなメリットをもたらすと考えている。
(協力:.NETビジネスフォーラム)

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