未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>25.アップワード

2005/04/25 20:43

週刊BCN 2005年04月25日vol.1086掲載

食品業に特化した生産管理

 アップワード(高橋貞二代表取締役)は、食品業を中心にソフト開発、情報システム構築、システム運用・管理などのITアウトソーシングサービスを手がける。

「食品業は、賞味期限など他の製造業にはない独特の生産管理手法が必要になる。しかし、食品業に特化した生産管理パッケージはないに等しい」(大野達也・執行役員企画・提案部部長)。これが、食品業界に目をつけた理由だ。2004年10月には、食品業向け生産・管理システムのパッケージ「MAS-1」を開発。このパッケージを軸にシステム構築を手がけている。

 アップワードの特徴は、システム構築時に「MAS-1」自体は無料で提供していることだ。「MAS-1」の導入に必要なソフトのカスタマイズや、システム稼動後の運用・管理をビジネスにしており、「パッケージをビジネスにしようとは思っていない」(大野執行役員)という。

 大野執行役員は、「日本の食品事業者は約8000社あるが、年商1000億円を超える大企業は5社ぐらいで、中小企業が極めて多い。しかも他の業界に比べてIT化が遅れている」と話す。ITに投資できる余力も小さいなかで、食品業のIT化を推進することと、受注案件を伸ばすための施策として、「パッケージを無料で提供するビジネスモデルを考えた」(大野執行役員)わけだ。「MAS-1」を活用した生産・管理システム案件の見込み客は、「現在100社以上」(大野執行役員)。

 「MAS-1」は、「食品業の生産・管理を熟知したITベンダーでなければ扱うのが困難」(大野執行役員)という理由から、販売パートナーを経由した間接販売は行わない。すべて直販による営業体制を貫いている。「MAS-1」をエンドユーザーに提案する際、同社では生産管理業務に長く携わった経験のある人材をコンサルタントとして組織。約10人のコンサルティングメンバーで導入支援を行う。

 大野執行役員は、「ソフト開発ビジネスは、オフショア開発の台頭など、単純にプログラムを書くだけでは生き残っていけない。強みとなる業種や分野を持つことが重要になってくる」と話す。

 食品業界にターゲットを絞り、パッケージを無料で提供するというビジネスモデルで、他社との差別化を図り、ビジネス拡大と食品業界のIT化支援を推進している。(木村剛士)
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