e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>33.電子債権が法制化へ
2005/04/25 16:18
週刊BCN 2005年04月25日vol.1086掲載
電子債権は、資金決済を中心にして金融サービスを大きく変える可能性を秘めた新しい概念である。経産省が公表した報告書では、電子債権を活用した7つの金融ビジネスモデルが紹介され、企業の資金繰りなどを改善する金融サービスの将来像を示した。これまでのITビジネスモデルは、IT先進国の米国などから導入されたものが多く、紙を使った既存の制度や仕組みを単に電子データに置き換えただけのものも少なくなかった。しかし、電子債権は、紙では実現が難しかった新しいビジネスモデルを日本が独自に構築しようという試みであり、それを実現するためのITシステムは世界中に売り込むことができる戦略商品となることが期待される。
「電子債権のメリットは、売掛債権などの流れを可視化できること」(経済産業政策局産業資金課)。この連載の第13回でも紹介したように、電子債権の基本的な仕組みは、企業間の取り引きなどで発生した電子債権を、第3者機関の「電子債権管理機関」が管理する「電子債権原簿」に登録して管理・流通させていくというもの。この電子債権原簿によって、債権・債務の状況を簡単に把握することが可能になる仕組みだ。例えば、従来の紙による融資契約を印紙税が削減できるなどのメリットがある電子融資に移行しようとした場合、紙のような法的証明機能が十分に担保されないとの懸念もある。そこで電子債権原簿に融資契約によって発生した電子債権を登録すれば、第3者の証明によって問題が解消される。さらに売掛債権を担保とした電子融資も、売掛債権が電子債権原簿に登録されていれば、売掛債権の確認作業が大幅に簡素化され、スムーズに実行できる。
経産省の報告書では、「融資の電子化」を含めて7つのビジネスモデルを検討した。親事業者と下請事業者の間の代金決済として普及してきた「一括決済方式」に電子債権に利用した場合、債権譲渡は電子債権原簿を書き換えるだけで適正に実行でき、確定日付のある通知・承諾、対抗要件の取得や先行登記の有無の確認など事務を省略できる。「手形の電子化」は、昨年12月から沖縄県で導入実証実験がスタートして有効性が確認され、紙の手形と同様の機能を持つ資金決済手段の実現が期待される。企業グループ内で資金の一元的な管理・運用を行う「CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)」にも活用できるほか、シンジケートローンなどの「債権流動化」に利用すれば将来的には電子債権のセカンダリーマーケット構築へ発展すると考えられる。「電子商取引」の資金決済に導入した場合には、売買から決済までシームレスな商取引が実現できる。輸送、保管、在庫管理などの物流機能を一括して他社に委託する「3PL(サードパーティ・ロジスティクス)」では、3PL業者が持つ一元的な物流情報と電子債権を連携させることで、売掛債権担保融資などの金融サービスも可能だ。これら7つのビジネスモデルが、今後の法制化の過程でどこまで実現されるか。大いに注目されることになるだろう。
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