視点

ACCSの上海事務所を開設

2005/04/18 16:41

週刊BCN 2005年04月18日vol.1085掲載

 ACCS上海事務所の開設を2月25日、正式に発表した。正式名称は「日本電子計算機軟件著作権協会上海代表処準備室(ACCS上海)」である。中国国内法における法人登記でないため、正式名称には「準備室」が付く。常駐する専任スタッフも決まり、4月から本格的な活動を始めている。

 私たちが中国でのデジタルコンテンツの権利保護、流通促進活動を進める一方、中国政府の著作権侵害対策も変化している。昨年12月に中国政府が発表した刑事罰に関わる司法解釈の変更はその一端だ。

 例えば、「3年以下の有期懲役又は拘留且つ罰金」が課せられる条件は、これまで、個人の違法所得金額が5万元(約60万円)、組織の違法所得金額が20万元とされてきたが、それぞれ3万元、5万元と引き下げられ、処罰の対象が拡大した。これを受けてか、新解釈が施行された日には、上海市で大規模な捜索が行われ、2軒の民家から海賊版ディスク1万4100枚が押収されたという。

 また、インターネットに音楽やプログラムなどファイルをアップロードすることは、著作権者の許諾なく行うと、日本ではいわゆる公衆送信権(送信可能化権)の侵害となる。中国法ではこれまで、明文として違法行為とされていなかったが、新解釈によって無許諾アップロードも違法行為となることが明確化された。著作権について厳しい態度で臨もうとする中国政府の動きが感じられる。

 4月12日には、上海の復亘大学で講演を行った。昨年、上海財経大学、華東師範大学、上海社会科学院などで講演した時は、これからの時代、著作権は国の礎になる制度だと語った。日本の著作権法にプログラムが明文化されて今年は20周年。その20年前の日本は、今の中国と同様だったことに触れ、だからこそ日本が取り組んできたソフトウェア管理やデジタルコンテンツ流通推進などのノウハウを生かすべきだとも説明した。このことは、中国の学生たちはよく理解してくれたと思う。

 先に挙げたインターネットへの無許諾アップロードやファイル交換は、一国の法律でカバーできる問題ではない。著作権について、中国も早く日本など先進国の制度に追いつき、その運用をしっかり行わなければならない。今後の講演では、こうしたより具体的なことを話していくつもりである。
 
一般社団法人 コンピュータソフトウェア 著作権協会 専務理事 久保田 裕
久保田 裕(くぼた ゆたか)
 1956年生まれ。山口大学特命教授。文化審議会著作権分科会臨時委員、同分科会国際小委員会専門委員、特定非営利活動法人全国視覚障害者情報提供施設協会理事、(株)サーティファイ著作権検定委員会委員長、特定非営利活動法人ブロードバンドスクール協会情報モラル担当理事などを務める。主な著書に「情報モラル宣言」(ダイヤモンド社)、「人生を棒に振る スマホ・ネットトラブル」(共著、双葉社)がある。
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