ITIL創生期 変わるITサービス

<ITIL創生期 変わるITサービス>3.プロアクティブなITサービスへ変革

2005/04/18 16:18

週刊BCN 2005年04月18日vol.1085掲載

 NECがITILに関する全社プロジェクト「ITIL導入検討プロジェクト」を開始したのは2002年秋。この年の前後2、3年内に富士通や日立製作所などが、ITILを自社のITサービス(アウトソーシングなど)や統合運用管理ソフトウェアに適用する検討を開始している。ITILは1989年に英国で第1版が発刊されているので、ITサービスの領域で日本と欧州は10年以上の差があることになる。

 ITILでは、システム構築の発注側(企業)と受注側(システムインテグレータなど)がITサービス仕様の取り決めに対して対等であることが大前提。だが、「日本固有の文化として、契約書やサービス仕様で縛ることをユーザー企業が嫌う傾向にある」(大手ITベンダー幹部)ため、運用・保守サポートはシステム構築後の付属物として位置づけられるケースが多いと嘆く。これが、これまで国内でITIL、あるいはITサービス改善への関心が薄かった要因でもある。

 一方で、ここにきて、ユーザー企業はIT投資の7割にも達する運用・保守サポート費の削減策に頭を悩まし始めた。保守・運用サポート費の増大が、戦略的なIT投資を妨げているためだ。こうした発注、受注両者のITサービスに対する課題を解決する手段として「ITILは万能で利用価値が高そうだ」と、気づき始めたようだ。

 こうした実情について、NTTコミュニケーションズの安岡恵一・ITマネジメントサービス事業部ビジネス推進部IT戦略担当課長は、「システムの提案・構築の時点では、ユーザー企業から徹底したコスト削減を強要され、保守・運用サポートの業務開始後に仕様上の曖昧さを利用して、さまざまな要求をあとから上乗せされる場合が少なくない」と話す。時には、故障対応のミスやシステム設計時の考慮漏れなどの弱点を付かれ、費用の支払い拒否や値下げ要求が発生することもあるという。

 ITILに準拠したITサービスを構築すれば、保守・管理サポートの改善や品質の維持高揚を継続的に実施でき、「プロアクティブ(受身でなく前向き)なITサービスを提供できる」(安岡担当課長)と、ITILに期待する。

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 NECは昨年12月、NEC本体と同グループ会社の自社基幹システムにITILを適用して蓄積したノウハウを基に開発した「ITILビジネススィート」のなかで、NECオリジナルのITILアセスメントシートによるユーザー企業のITシステム運用診断サービス「ITIL診断サービス」を開始した。

 現状システムの保守・運用サービスとITIL記載の運用プロセスとの差異を詳細に分析。これに基づき、改善目標を設定し、目標達成に必要なツールの提供や施策を「ITIL導入コンサルティングサービス」として提案し行っている。こうした、ITILの診断→コンサルティングに関するサービスは、富士通や日立、日本アイ・ビー・エムなども提供している。ITIL診断が広がることで、ITILを適用するユーザー企業は増えそうだ。(企画編集取材班)
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