個人情報保護法で変わる“IT風景”

<個人情報保護法で変わる“IT風景”>11.情報漏えい対策がキラーアプリに

2005/04/18 16:04

週刊BCN 2005年04月18日vol.1085掲載

 前号では、情報漏えい対策を目的にして本格的なモバイルコンピューティングを取り入れる企業が増えていると述べた。

 このように既存のツールやソリューションの存在価値が見直されるケースが目立つ。市場で埋もれかけていたものが、「情報漏えい対策」という「キラーアプリケーション」を得たのである。

 例えば、アクセス(監査)ログ。個人情報保護法への取り組みでは、「ポリシー作成」、「社員教育」と並んで必要最低限の取り組みと言われている。実際、エムオーテックスの「ランスコープ」などのアクセスログ製品の販売が伸びている。

 ネットワーク上の共有データに対する詳細なアクセスログが残るようになれば、少なくとも内部関係者の不正利用は防げる。

 ネットワーク関連ソフトの中でも決して目立つ存在ではなかったアクセスログ製品は、市場がほぼ成熟していたが、情報漏えい対策ツールとして息を吹き返し、新たな価値を提供している。

 シンクライアントも再生してきたソリューションの1つだろう。1995年に米オラクルが“ウィンテル”に対抗して「ネットワークコンピュータ(NC)」を提唱し、TCO(システム総保有コスト)削減に効果があると一時的に注目を集めた存在だが、その後、ほとんど普及してこなかった。

 この10年、一貫して性能向上と低価格化が進んだパソコンに勝る魅力をシンクライアントは打ち出せていなかったからだ。ところが周知の通り、最近になって「脱ウィンテルのTCO削減」という側面からではなく、情報漏えい対策ソリューションとして有効性が認識されている。

 シンクライアントの形態も広がっている。米サン・マイクロシステムズの「Sun Ray」のようにインタフェースがLinux仕様のものもあれば、日立製作所の「フローラSe120」ようにウィンテル仕様パソコンをベースにしたものもある。ユーザーの選択肢は確実に増えている。

 加えて、技術進化した最新のシンクライアントは、パソコンのローカルディスクを使う時とほぼ同じ感覚でサーバー上の各種アプリケーションを利用できる。ユーザーの抵抗感も薄れてきた。

 市場で埋もれているツールやソリューションの中には、情報漏えい対策に有効なものがまだまだあるのかもしれない。(坂口正憲(ジャーナリスト))
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