コンピュータ流通の光と影 PART IX

<コンピュータ流通の光と影 PART IX>拡がれ、日本のソフトウェアビジネス 第2回 プロローグ(2)

2005/04/11 20:42

週刊BCN 2005年04月11日vol.1084掲載

 2005年は、大手ベンダーから中堅・中小のソフトウェア開発会社まで大きな変革がスタートする1年になりそうだ。業績低迷から脱しつつある富士通(黒川博昭社長)は地方にあるシステムエンジニアリング(SE)会社の再編に着手しており、NEC(金杉明信社長)も今年6月をめどにNECソフト(東京都江東区、池原憲二社長)とNECシステムテクノロジー(大阪市中央区、高橋利彦社長)を100%子会社化し、NEC本体を一体化したシステムインテグレーション(SI)事業を展開する方針に転換した。(光と影PART IX・特別取材班)

SI再編急ぐ富士通、NEC ソフト・サービス重視が明確に

■地域SE会社の統合進める富士通

 富士通は黒川体制2年目の昨年6月、「フォーメーションの革新」として大幅な事業体制の改革に着手した。事業本部レベルでマーケット別のフォーメーションとして、(1)産業・流通ソリューションビジネスグループ、(2)社会基盤ソリューションビジネスグループ、(3)金融ソリューショングループ、(4)公共ソリューショングループ──などを組織。地域ビジネスについては地域ビジネスグループとして、北海道から九州まで9つの営業本部を置いた。また、地域連携を強化するためにパートナービジネス本部と地域ソリューション本部も設けている。

 この組織革新に前後して、地域会社体制の改革にも着手していた。まず、03年4月にはそれまでの富士通北海道システムエンジニアリングと富士通東北海道システムエンジニアリングを合併し、富士通北海道システムズ(札幌市厚別区)を設立した。次いで04年7月には、富士通青森システムエンジニアリング、富士通秋田システムエンジニアリング、富士通東北システムエンジニアリングの東北3社を統合し、富士通東北システムズ(仙台市宮城野区)を発足させた。 そして04年10月には、富士通徳島システムエンジニアリング、富士通高知システムエンジニアリング、富士通愛媛情報システムズ、富士通香川システムエンジニアリングの四国4県にあるSE会社を合併し、富士通四国システムズ(香川県高松市)を設立するなど、地方事業の再編を急ピッチで進めている。

 これまではそれぞれ県別に展開していたものを、新たに地域別に変更。より広いテリトリーを対象に、開発力の集中などで業務の効率化を図っていく。四国の場合、03年2月に高知市に隣接する南国市の「南国オフィスパーク」にIDC(インターネットデータセンター)機能を持つ高知富士通テクノポートを着工した。四国4社の事業統合では、この高知富士通テクノポートに開発機能を集中させ、品質向上と低コストのソフト開発を徹底していく方針だ。

 国内のソフト開発体制を強化していくためには、北海道、東北、四国と同様に、今後も関東や中部、北陸、関西、中国、九州などでもこうした統合を図っていくことが必要になるだろう。

■NECはソフトビジネスを本社直轄に

 NECは04年12月2日、グループの上場会社でSIビジネスを展開している東京拠点のNECソフト(NECの持ち株比率37・13%)と大阪拠点のNECシステムテクノロジー(同66.67%)を、株式公開買い付けによりそれぞれ100%子会社化すると発表した。目的は、NECグループ全体のソフト・サービス事業体制を再編・強化し、SIおよびソフト開発力を強化することにある。

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 NECのソフトウェア事業会社のグループは、NECソフトウェア北海道(札幌市北区)、NECソフトウェア東北(仙台市青葉区)、NECソフトウェア北陸(石川県白山市)、NECソフトウェア中部(愛知県日進市)、NECソフトウェア九州(福岡市早浪区)、NEC情報システムズ(東京都港区)、NECソフト沖縄(沖縄県那覇市)、そしてNECソフトとNECシステムテクノロジーで構成する。このうちNECソフト沖縄はNECソフトの子会社であり、それ以外の地方SE会社はNECの100%子会社となっている。

 今回、NECソフトとNECシステムテクノロジーが100%子会社となることは、資本関係だけからみれば、こうした地方開発会社と全く同列ということになる。実質的には現段階でも各NECソフトウェアが独自に地域向けのビジネスを一部行っている以外は、NECやNECソフトからの委託が多いという。

 6月に向けたNECの事業再編について、受託ソフト開発を重要な事業の柱としているSIの首脳の1人は、「NECグループ内で完結できる体制を目指すのか」と疑心暗鬼に駆られている。

 NECは、NECソフトを00年7月に東証1部に上場させたように、これまではあくまでも独立したソフト会社を目指してきた。上場以前も関東地区にあったNECのソフトウェア子会社を合併し、上場後も新潟や長野、静岡の旧NECソフトウェアを合併して企業規模を拡大させてきた。

 一方のNECシステムテクノロジーは関西を拠点に、01年に神戸、岡山、中国、四国にあった各NECソフトウェアを合併し現在の社名となり、03年9月に同じく東証1部に上場している。それがここにきて両社を100%子会社化し、NECグループとしてソフトウェア事業を本社直轄に一元化することを目的とした再編に対して、周囲から「パートナー事業にも大きな変化が出るのではないか」という不安が頭をもたげているようだ。

 富士通、NECともにソフトウェア事業の再編が現在進行形で進んでいる。通信やコンピュータハードでの成長が期待できない今、収益の柱となるべきは「ソフト・サービス」という構図を描いていくと、想像するのは難くない。大手メーカーの変革は、すぐに形を変えて中小ソフトベンダーや下請けソフト開発会社に影響してくる。
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